推奨するマネジメント手法
全社一体体制のものづくり改善マネジメント
-ものづくりグローバル標準マネジメントシステムの構築-
第3章 全社一体型マネジメントシステムを支えるマネジメント技術
4) 推奨するマネジメント手法
マネジメント手法とは、改善・革新を推進するために、適用の対象・局面(切り口)を明確にした、改善・革新の考え方、手順、思考整理ツール(分析・設計ツール)をいう。
全社一体型マネジメントで扱う事業戦略から展開した成果を刈り取るまでには、さまざまなマネジメント手法を活用することになるが、主なマネジメント手法を位置づけた概念を図表3‐2に表す。
①事業戦略・方針設定をまとめるマネジメント手法
②部門目標達成のためのマネジメント手法
③問題解決の手順・考え方を整理した手法
前記「2 マネジメント手法の適用のポイント」で分類された8つの手法のうち、①方針展開、② 目標展開、③問題解決の考え方……は、方針展開、目標施策展開、個別改善ストーリーの手順や思考を整理するマネジメント手法として、全社一体型マネジメントの推進エンジンであり、骨組を構成する基幹手法である(図表3-3)。
④事業特性、部門特性に応じたアプリケーション、マネジメント手法
さらに、④~⑧が支援マネジメント手法になる。
これらは、事業特性、部門の特性に応じた革新プログラムやアプリケーション手法で、コンサルティング会社や企業の実践から体系化されたものである。適用にあたっては、自社の事業特性にマッチしているかの見極めがポイントである。
⑤切り口を革新のきつかけにして改善・革新活動を導く手法
IEやQC、VE……などは、製造業であれば普遍的に活用できる手法として、体系化された基礎マネジメント手法である。対象部門や領域にあわせた思考の整理法としても体系化されている。全社一体型マネジメントに関わる人材には、一度は基本から学んでほしい手法である。
⑥小集団活動のような職場活動を活性化させる手法(改善活動活性化)
設計部門やIT開発部門など知的作業の職場活性化などの手法
人の積極的行動・自律を促す手法(モチベーション手法)
1990年以降から製造業の空洞化が進むなか、職場そのもののドライビングパワーの不足が指摘されるようになってきた。現業部門では、有期雇用者や請負労働、派遣労働の割合が顕著になっている。設計開発部門では分業化が進み、あるいは、ソフト開発が主流になると頭脳労働に携わる人々の活性化が重要なマネジメント課題になってきた。
特に、改善・革新には大きなエネルギーが必要である。職場を活性化する活動推進エネルギーを刺激する仕掛け型のマネジメント手法が注目されるようになってきたのである。
⑦より創造的な問題解決を行うための思考法の習得(Thinking Method)
技術が高度化し、業務が複雑化してくると思考を研ぎ澄ませて、脳を活性化しないとブレークスルーが容易にできなくなってきている。問題解決の局面での分析、問題の構造化、課題設定、目標設定、解決アイデア発想、案の設計、案の評価などでの思考を誘導するマネジメント手法である。
⑧自律化を促すモチベーション手法
本来、改善・革新活動には、自律的に問題に挑戦する意欲が不可欠である。そうしたことを支援するのが、個人の積極行動を促すモチベーションマネジメント手法である。
推進リーダーにとっては、全社一体型マネジメントを機能にさせるためには、①~⑧のマネジメント手法をうまく活用できることが不可欠である。推進エンジンと呼んでいる①~③までの展開手法は、手法に基づいてある程度まで浸透するが、真の自律した活動にするために体質強化を図るには④~⑧がうまく活用することが肝である。
強い企業体質のマネジメント組織にするために、④~⑧のレベルアップを日々の取組みを通じて実現したいところである。