ステージ1:導入期 単一目標による手順の確立
全社一体体制のものづくり改善マネジメント
-ものづくりグローバル標準マネジメントシステムの構築-
第2章 全社一体体制のマネジメント
3)各ステージの内容
(1)ステージ1:導入期 単一目標による手順の確立
グローバル標準マネジメントシステムの導入期にあたるステージ1では、部門の小さな課題であっても、目標と施策が明確に結び付いている状態を作り出したいと考えている。すなわち、過去の慣習や他社・他職場の単なる追従ではなく自部門の課題をきちっと認識し、それを達成目標としていろんな施策の可能性を検討し結びつけるということである。具体的には、部門の課題をブレークダウンし、実施すべき施策を決める。そして、その施策の実施計画と実施状況の把握がなされている状態を作り出すことを日的に展開する。
①特徴と進め方
ステージ1の対象となる企業は、改善活動への取組み状況がまだら模様の企業である。たとえば、既存の改善活動がメンバーを上手に巻き込んでいる職場もあれば、リーダーの一人相撲で展開している職場などもあり、改善活動がばらばらに実施されている企業である。
こうした企業では、経営成果に大きな貢献をしている職場、改善成果が測定できていない職場など、活動のレベルや成果も職場によってまちまちで、改善活動に課題があり、マネジメント・システムや改善基盤に課題を抱えている企業である。
ステージ1の特徴は、既存の改善活動の取組み状況や活動成果を評価し、問題点・課題を明確にして、進める点である。またQCDのそれぞれの目標を再設定して、下層へと目標を展開し、目標値に対応する施策を抽出して整合性をとっていく。
ここでは、それぞれの目標値を達成するためにPDCAの管理サイクルを築き上げていく(図表2-24)(図表2‐25)。
このステージで実現すべきことは、どの職場でも自職場の課題を正しく認識し、それを解決すべき目標として、目標を順次展開し、施策検討可能な個別目標まで展開することを意図的に行うことである。
もちろん展開に際しては目標の重点を意識するために寄与率を適用するなどの工夫もする(寄与率とは、その目標を一つ下のレベルに展開した時、それぞれ何パーセントをどこに割り付けるかを表すもので、重点化を意識するという意味で使用する)。
例えば、ある職場でコストダウンする場合、XX%コストダウンとするとその中を労務費で○○%、材料費で△△%、経費は0%などと展開する。さらに労務費・材料費は次のレベルに展開することになる。何段階かの展開をすると、材料費の場合、個別目標レベルでは、「○○の不良率をX%減」といった具体的な目標となる。その個別目標を達成する手段や施策を捻出することになる。そしてその施策による効果予測をする。その予測で目標達成が未達ならさらに施策を検討する。
計画段階で確認すべきことは、施策を適用することで目標を達成できるものになっているかどうかということである。そのために施策の幅広い検討は必須ということになる。施策が決まればその実施計画を作成する。そしてその実施計画を着実に実施し、成果につなげていくということになる。
ステージ1では、「目標達成のためにこの施策がある」、逆に「この施策はこの目標達成のためのものである」ということがきちっと説明できることが必要である。そのために目標展開と施策展開が一覧で見えるよう工夫する。
もちろん施策に実施に関しては、常時状況が見えるような工夫もなされることになる。
②教育プログラム
より効果的な施策を捻出するためにこの段階では幅広い改善の知識が必要となる。そこでこの段階で必要な実践的な研習・教育プログラムが必要となる。
それらは、「改善の定石」や「マネジメントの定石」など、基本的な知識を学習する。また目標施策展開マトリックス法やQCD改善テクニックなど、実践活用できる技術も対象になる。管理職においては、リーダーシップやコーチングなど、部下とのコミュニケーションに役立つ技術を学習する。
③整備すべき制度・仕組み
改善活動の基盤となる「目標を共有化する仕組み」や「社内の教育体系」を再構築する仕組みをステージの中で具体化していく。また、改善活動基盤としてPDCAの管理サイクルが廻る仕組みを構築する。「社内教育体系」は、既存の仕組みとの兼ね合いがあり、段階的に改訂していくと良い。