市場環境、価値観の変化への対応
全社一体体制のものづくり改善マネジメント
-ものづくりグローバル標準マネジメントシステムの構築-
第2章 全社一体体制のマネジメント
1)事業環境変化への対応
最近は環境の変化のスピードが非常に速く、変化に対応するためのフレキシビリティーが強く求められている。また、グローバル化が進んだ現在では、あらゆるリスクに対する備えが欠かせないが、逆に社内では、組織が複雑化して経営層の想いを浸透させることが、いっそう難しくなっている……など、これまでのやり方では、総合的な解決を図ることが非常に困難な状況になっている。
それらをどう克服するか、全社一体体制のマネジメントの具体的なケースなどを事例で紹介しよう。
1)市場環境、価値観の変化への対応
昨今、全社一体体制の活動がより求められている理由はどこにあるのだろうか。
低成長、GDPの伸び悩み、非正規雇用者の増大、高齢化社会の到来……などなど、日本の産業界を取り巻く環境は、とてつもない勢いで変化している。
それに加え、リーマンショックに代表されるように、突然の地震も襲ってくる。
いったん状況が変わると、その変化は想像を超えて雪崩を打つように一気に進む。
身近なところでも、事業環境の変化要因として、
・従来は考えられなかった新しい事業モデルの登場
・グローバルでのM&Aを含む企業グループ再編成の急速な進展
・日本の技術優位性に対する信頼性の低下
などが懸念され、
・商品は、極めて短サイクル化し
・雇用形態も非正規社員の多様化・短期化、雇用形態の多様化が進み
・流通のグローバル化に伴う株価や取引価格が短期に急激に変動(デフレ、インフレの相互の波)し
・グローバル企業では、現地マネジメントのレベル向上策を含め、特に中国・アジアでのビジネスモデルの確立に向けた模索が続いている。
一方、社会の価値観の変化に合わせた、
・企業活動や商品の地球環境保護(Co2削減)への対応
・社会・地域への貢献をはじめとして
・顧客や従業員の満足の実現
……など、より広いステークホルダーとの良好な関係づくり(CS、ES)、といった課題が目白押しである(図表2-1)。
こうしたテーマは、他責にはできない。これらを前提として、企業は向かうべき方向を見極めなければならない。高度成長時代の様に、物を作って売るだけでは通用しない時代になっているのである。
こうした環境の変化の中では、経営TOP層には、的確でスピーディな意思決定が求められ、やるべきことは当然多くなり、悩みは多い。最近の経営層の悩みをまとめると、以下のように4つにまとめられる。
①TOPの想いが社内に浸透しない、わが社のDNAが浸透しない
②従業員が一生懸命やっているのは分かるが、期待する成果が出ない
③課題は明らかになっているが、できる人材、任せられる人材が不足している
④成果主義や結果管理の弊害の1つであるが、部門間の連携や協力し合う姿勢が乏しい
一番の悩みは「TOPの想いが社内に浸透しない、わが社のDNAが浸透しない」というもので、非常に辛い実態となっている。
これらの問題は、従来のやり方を踏襲していては改革できない……ということであり、全社一体体制でのマネジメントを実現するためには、当然だが、これらの課題を解決しなければ、現状をブレークスルーすることはできない。