事業ドメインと明確なビジョンの確立
全社一体体制のものづくり改善マネジメント
-ものづくりグローバル標準マネジメントシステムの構築-
第1章 全社一体体制での改善活動の目指す姿
3)全社一体体制での改善活動推進要件
改善活動は、全社レベルの改革テーマから小集団活動のテーマまで、テーマはさまざまであるが、活発に展開するためには、どのようなケースであれ、
・雇用の仕組があること
・全社で一丸となって推進すること
・粘り強く継続すること
が不可欠である。
これらがうまく機能しないと、形だけの改善活動に陥ってしまい、期待する成果が出ず、 日常の生産活動でも生産性が上がらない状態に陥ってしまう。
それをブレークスルーする意味で、以下に全社で改善活動を推進するための要件をまとめてみたい。
1) 事業ドメインと明確なビジョンの確立
すべては、事業ドメインが明確になっているか……という問いから始まる。
事業ドメインとは、事業を行う領域のことで、「事業ドメインが明確になっているか」というのは、事業を行うに際して
・どんな領域に
・どんな付加価値を
・どのように提供するのか
が明快に設定されているか……ということである。
領域が曖味であったり、広すぎたりすると、自社の実力に合わない無用な(無謀な)多角化に走り、結果として失敗に終わることになりかねない。逆に狭すぎても、機会損失を招いたり、
最悪な場合には環境の変化により市場がシュリンクし、企業そのものの存在価値がなくなって、清算せざるをえないといったことにもなりかねない。
いずれにしても将来を見据えたドメインを明確にすることが必要である。
かつてNECが、C&C(コンピュータ&コミュニケーション)を事業ドメインにしたことは有名である。このドメインを設定することで、事業をそれまでの通信事業から、コンピュータや半導体まで拡大し、大きく発展を遂げた。
またビジョンがあるかどうかも企業の永続的発展にとっては欠かせない。
ビジョンとは、企業のあるべき未来像(見える化されている)のことであり、そこには経営者の夢や思い、意志が込められていることが重要で、しかも従業員の共感を得られるものでなければならない。
しっかりした未来像、従業員との共感が生まれてこそ、目指すベクトルが一致し、全社の力が最大限発揮されるベースが整うのである。
図表1‐3に、企業の経営理念と事業ドメインの一例を示す。