全社一体体制のものづくり改善マネジメント
まえがき
全社一体体制のものづくり改善マネジメント
―ものづくリグローバル標準マネジメントシステムの構築――
まえがき
全社一体体制でのものづくり改善活動は、5つのキーワードで推進してきた。
それらは、①顧客・環境志向、②連携組織作り、③風土づくり、④人づくり、⑤製造基盤強化である。
これらを活かす手段としてマネジメントシステムが考えられるが、マネジメントの仕組みは企業ごとに個別性の高いものであり、各社その歴史においても自社の仕組みに磨きをかけてきており、
大抵のことはやっているという自負もある。
ただその運用を含めて“実効あるものですか”“全社で活かし切っていますか”と問うと、どこの企業も自嘲気味に“まだまだ”と答える。
ここ数年企業活動そのものが大幅に変わってきている。それは単にグローバル化という言葉では言い尽くせない多様な変化である。先進国においては、金融不安が産業界に大きな衝撃を与えた。その一方で中国をはじめとする
新興国の目覚ましい発展がある。先進国を見据えたハイエンド商品でのグローバルなものづくり競争をしていた時代から、新興国を意識したミドルエンド・ローエンド商品をも視野に入れた多様なグローバル競争へと変化して来た。
ものづくり自体も国際分業により、ローコストを求めて、いろいろな地域に進出して行くというだけではなく、新興国で育ちつつあるマーケットヘの対応も求められる時代となった。
各企業の海外進出当初の機能分業は必ずしも有効ではなく、その機能を再編成したり、統合したりということが都度行われるようになってきた。
そして、その土俵がグローバルであるだけに、ローカル人材での経営管理の実践・運用や現地化を見据えた運用もまた求められるようになってきた。
こうした多様な変化の中でどのように全社一体を実現するかが大変重要な課題となってきている。これに応えるのがマネジメントシステムであるがその発展の経緯を見ると大別して2つの動きがある。
それらは
l.TQC(Total Quality Control)やTPM (Total Productive Maintenance)あるいはKAIZEN活動などのように個々のラインや工程。設備を、標準化された手順に従い徹底的に改善し、それを組織全体に広げていく、いわば“徹底・全体型”と、
2.BSC(バランスド・スコアーカード:balanced scorecard)、あるいは日本能率協会が提唱して推進し、大きな成果を生み出したTP(総合生産性)マネジメントなどの“全体最適型のマネジメントシステム”の2つのタイプである。
どちらも有効な手法であるが、グローバルな事業展開の中で改善マネジメンに取り組むためには、さらなる一工夫が必要と考えられる。特定機能の強化ではなく全体を視野に入れたバランスのよい進め方が不可欠なのである。
個々の企業が提供する商品やサービスは、グローバルな市場で競争しており、その競争力を高めていくことに焦点を当てて活動すべきである。
そのために各企業は、機能連携を含めた全体最適・全社一体の取組みが不可欠となる。
全ての経営資源を集約して全体の最適化がなされなければならない。
たとえ機能が分散していても改善の全体像が見え、活動が意図どおりに進み全体最適が実現される姿、それが「ものづくリグローバル標準マネジメントシステム」であり、その実現を目指したいものである。