全社一体型マネジメントシステムとマネジメント方式
全社一体体制のものづくり改善マネジメント
-ものづくりグローバル標準マネジメントシステムの構築-
第3章 全社一体型マネジメントシステムを支えるマネジメント技術
3)全社一体型マネジメントシステムとマネジメント方式
(1)「運用重視」と「仕組み重視」2つのマネジメント方式
日本国内において古くから慣習化されたマネジメントの特徴として、
①企業への高いロイヤリティを前提にした担当者の自律的な業務への取組み
②担当者間での頻繁な調整・すり合わせによる円滑な業務遂行があげられる。
ときにはボトムからの提案によって、トップ方針とのすり合わせ修正も行われている。こうしたやり方を、「個と組織が融合されたマネジメント方式」とここでは特性づけておく。特に、異常や問題に対するアジャスティングは、担当者の力量さえあればスピーディにおこなわれ、かつ柔軟に対応できるという特徴がある。
このようなマネジメント方式を運用重視型のマネジメント方式とここでは呼ぶことにする。
一方、対極にあるトップダウンを重視したマニュアル重視型の経営方式を仕組重視型のマネジメント方式としておく。
一般的には、
・運用重視型のマネジメント方式=日本のマネジメント
・仕組重視型のマネジメント方式=欧米のマネジメント
とみなされている。
(2)機能しにくくなつた「運用重視型」
運用重視型のマネジメント方式が機能するには、前提条件が必要である。
1つには、比較的高等教育の履修者が多く、ボトム層といえども改善に取り組める能力を有している人材がいることである。
2つ目は、就業感として企業の発展が自己の発展につながると考えている社員が多く占めていることである。
背景には、終身雇用、年功賃金など人事面における制度がある。
しかし、日本国内の社会の変化によって、終身雇用、年功賃金が崩れはじめている。また、かつての日本企業では当たり前のようであった価値観が、新入社員の就業意識の変化や、製造業における派遣労働者の増大などにより、失われつつある。
さらに、企業の海外展開にともなってミドル層が海外に赴任し、各地に分散するようになって、国内では高いスキルと意識が要求される『自律、調整・すり合わせ』の行動が希薄になりつつある。
その結果、ボトム層からの改善・革新の推進力が弱くなり、運用重視型のマネジメント方式も今日においては、機能しにくくなっている。しかし、企業は刻々と変化する環境にアジャストしていかねば生き残ることができない。
改善・革新なくしては、衰退しか待っていない。日本企業が元気になるためにも、企業の中軸を支えるミドル層を軸に、仕組みをもって実務のマネジメントを遂行する必要が生じているのではないか。
目標と施策を明確にした全社一体型のマネジメント活動で、事業所として取り組むべきことを明確にした上で、一人一人の自律を促し、業務の見える化によって最小限の調整・すり合わせでも、事業の改善・革新が進んでいくマネジメントの運用が重要と考える。