収益管理――キャッシュフローとスループット会計
5)収益管理――キャッシュフローとスループット会計
①キャッシュフローとは
キャッシュフローとは、文字通り資金の流れということで、ある期間の活動の結果として、どのくらいキャッシュが増減したのかによって、その間の経営が成果をもたらしているのかどうかを測ろうとするものです。国際会計基準の導入などの動きに合わせて、この管理もまた、生産管理部門の重要な課題になってきています。
生産管理活動の最終目的が生産活動を通じた企業の収益向上という点で見ると、QCD で管理する「C」よりも、その結果としての資金の増減を把握する方がある意味で正しいのですが、これが行き過ぎると、短期的な収益増化策が歓迎されやすくなるというきらいがあります。
日本ではこれまで企業の活動成果を、決算期ごとに損益計算書と貸借対照表で見てきました。
損益計算書はある期間の収益を計算して利益を算出したもの、貸借対照表は期末時点での財務状態を見て、前期末との比較で会社の収益をみるものです。
日本の企業はどちらかと言えば損益計算書をベースに、収益を測ってきましたが、資金や資産の動きを把握するという切り口から、むしろ貸借対照表の重要性が言われるようになっています。
②スループット
スループットとは、キャッシュの流れをより明確にするために一つの考え方で、大まかに言えば、売上高から仕入れ分を引いたものを言います。
スループット = 売上高 – 仕入れ費用
企業の収益を拡大するためには、まず、このスループットを最大にすることが必要で、その後に、スループットを大きくするための原価低減活動を行えばよいというものです。
ここでは、工場原価の要素となる、加工費や減価償却費、光熱費などは含みません。
考え方としては、製品を1 つ販売すればその製品のスループット分だけキャッシュが増加します。
企業に残る最終的な利益は全製品のスループット総額から全体の費用を引いて残った額であり、スループット総額の最大化を目指せば自ずと企業が生むキャッシュも最大にできるという考えです。
つまり、企業の収益を拡大する方法として、
1)スループットを増大させる
2)そのうえで、資材の使用量や在庫量を削減する
3)さらに、経費や人件費などの費用を削減する
という流れで改善を進めることで、企業の収益を向上させることができるというものです。
単に原価という範囲にとどまらず、キャッシュフローやスループットの視点で生産活動を見るのは生産管理部門の役割でもあり、これからの業務としてこうした収益性を考慮した全体最適の視点も重要な課題です。