製造業の現状と課題
①製造業に押し寄せる大きな変化
1970年代後半から、事業戦略の中心的な課題となっていたのは海外展開、 特に中国への進出でした。しかし、中国での人件費が高騰してきたことで、 最近は、いかに撤退するか、そのリスクが検討されるようになっています。
しかし近年、中国の先進企業は、人件費上昇分をロボットや自動機などの 導入で相殺する戦略を取っており、また、アジアンワイドで安価な調達網を 構築しつつあり、背後に控える大きな市場への出荷を前提にすれば、中国の 工場の価格優位性はしばらく継続すると考えられます。
一方、IT技術の高度化も急速に進んでいます。
あらゆるものがインター ネットを介して操作される時代になりつつあり、スマートファクトリーの構 想も現実に動き出しています。
製造業を取り巻く環境が大きく変化する中で、製造業、および生産管理部 門に押し寄せる変化の波も、また急です。
②製造業を巡る課題
製造業の置かれた環境は、いま、大きく変化し、それが生産管理のあり方 にも影響を及ぼし始めています。
製造業および生産管理を巡る課題を考えて みましょう。
ここでは大きく以下のような5つの変化を見てみます。
①短納期化とフレキシブル生産体制の強化
②海外展開の加速
③ IT 技術革新と活用
④グローバルな競争力の強化
⑤国際会計基準への対応
(1)短納期化とフレキシブルな生産体制の強化
それまでビジネス用に多く使われていたカセットテープレコーダーから、 ウォークマンが生まれたのは1979年でした。
このころを境に、商品のライ フサイクルが短縮化し始めました。
データは少し古いのですが、図表2-1は2007年度のヒット商品のライフ サイクルを時代の変化で比較してみたものです。
現在は、この傾向はますます加速し、かつては、ヒット商品は5年以上の長さで市場で販売されていましたが、今や1年ももたずに市場から消える商品が大半です。
こうした市場 環境を受けて、新製品のモデルチェンジサイクルも短くなり、製造業にとっ ては短期間で開発し、製造し、売り切るという戦略が重要になっています。
この傾向は今後も続くことが予想され、企業にとっては在庫をできるだけ 保有しない、市場の変化に合わせたフレキシブルな生産体制を構築すること が生き残りへの重要なポイントになっています。