生産管理を巡る現状と課題
2 生産管理を巡る現状と課題
製造業を巡る環境の変化を受けて、生産管理の分野にも大きな影響が及んでいます。
そうした変化がさまざまな問題を生産現場にもたらしています。
生産現場に行くと、生産計画がたびたび変更になるためそれに対応しようとして製品や部品の在庫が増えていたり、フレキシブル生産をめざすという方針のおかげで品種切り替えが増えている、品種切り替え時の優先順位が無視されてしまっている…などの声が聞かれます。
こうした声を集約すると、以下のようなものがあります。
・生産計画に変更が多い
・計画変更にうまく対応できていない
・計画変更に対応するために在庫が
増える
・頻繁に品種切り替えが起こる
・資材の欠品がたびたび起こる
・手直しが多くなっている
・稼働率がアンバランスになって
しまう
・原価の加工費率が高くなっている
・海外からの調達品の在庫が多く
なっている
・計画変更時に、生産の優先順位が
分からない
・生産管理人材が育たない
・生産リードタイムが短縮できない
①在庫はムダ? バッファ?
近年は、短納期、在庫削減、フレキシブル生産が、三種の神器のようにいわれて、製造業の合言葉になっています。
そして、その前提は、「納期遅れ厳禁」です。
これができなければ生き残れないという意見も多く、経営戦略や年度目標に入れられ、特に、目に見える在庫は目の敵にされています。
もちろん、基本的な流れとしては正しいのですが、生産計画の変更が頻繁に起こる中で、しかも、その揺れ幅がかなりの規模である状態で、在庫縮小を目指せば、納期遅れの危険性が増し、逆の納期順守のリスクが高くなります。
特に一番目立つために目の敵にされることの多いのが製品在庫です。
果たして在庫は本当に「ムダ=悪」なのでしょうか?
製品在庫の最大の役割は、納品に後れを出さないための砦で、生産計画が増える方向に変更になった時のためのバッファ役です。
本来ならば、素材段階から組み立て完成まで、何社かを経て生産されるプロセスは、一気通貫で
つながっているのが最も効率的なのですが、生産段階の各社、各段階では流れる時間が異なりますので、一気通貫でつなぐことは現実的ではありません。
そこで、やむなく調整弁として置かれているのが在庫です。
それを「在庫削減」を意識した結果の戦略を重視することで、「納期厳守」への時間調整は在庫から、「残業で対応」へと変わってしまうのです。