グローバルな競争力の強化と国際会計基準への対応
4) グローバルな競争力の強化
①継続的な技術・開発力の強化
国際的な競争力を強化するために、技術開発力を育成することが重要です。
日本は、2000 年以降でみると、アメリカの43 名に次いで12 名のノーベル賞受賞者を出してきました。
英国9 人、仏と独の各6 人をしのいで、世界第2位のノーベル賞の受賞国なのです。
しかし、こうした旺盛な研究開発力も、今後に警鐘が出されています。
国全体(官民合計)の研究開発費の減少が続いているうえ、成果が優先されて開発テーマが短期化している結果、日本の特徴であった長期的な研究開発テーマが採用されにくくなっているなどで、今後は必ずしも、これまでのようにはいかないのではないか、という危惧が叫ばれています。
また、特許取得状況を見ても、我が国の場合は、既存ビジネス強化のためのものが大半ですが、米国は非連続型研究の割合が我が国の3 倍もあり、将来の競争力に大きく影響するおそれが懸念されています。
②中小企業の育成
我が国の産業構造は、商品企画と製品化を大企業のセットメーカーが担い、この部品に使われる固有技術を中小企業が保有しているというのが基本です。
日本には、世界的にもユニークな高い技術を持ったグローバル・ニッチ・トップと言われる中小企業がたくさんあります。
そうした企業が輸出の拡大に貢献しているかと言えば、決してそうではありません。
ドイツはGDP36,358 億ドルのうち、40% の14,527 億ドルを輸出していて、その19% が中小企業です。
一方、日本は、GDP48,924 億ドルで輸出は7,141億ドル、GDP 比率は14.6% で、中小企業は、3% にすぎません。
つまり、ドイツがGDP の40% を輸出できているのは、中小企業の貢献が大きいのですが、今後、日本が輸出を拡大するためには、中小企業を育成して技術力を強化し、輸出を拡大するという方向も課題といえるでしょう。
SCM のあり方を再考する必要があるかもしれません。
(5) 国際会計基準への対応
いま、日本の企業が採用している会計基準には、日本基準、アメリカ基準、国際会計基準(IFRS)の3 つがありますが、最近、多くの企業が国際会計基準に対応させるように変わってきています。
日本の会計基準は、期間の損益を重視したもので、いわば損益計算書が重要な役割を果たしていました。
これに比べて、国際会計基準になると、将来への経営判断材料を提供するという立場から、期末の財務状況を重視するようになり、貸借対照表にあらわされるキャッシュや資産状況が重視されるようになってきます。
このことから、在庫状況なども重要な指標になり、その意味では、調達と在庫管理の財務面での意味が、重要性になってきます。単にリードタイム短縮、納期順守という生産管理面だけでなく、調達を基盤にしたキャッシュフローやスループットが重要性を増してくる状況にあります。