これからの生産技術者の役割 まえがき
経営戦略と生産戦略の整合化を
近年、日本の製造業は国内のみならず、海外での事業展開を強力に推し進めている。また、生産機能そのものを自社内に持たず、アウトソーシングするというケースもある。このような環境の中で生産戦略を検討するにはグローバルな視点で、競合の動きを視野に入れながら生産拠点計画や物流の最適化を図ることが必要である。
また、世の中の技術動向を把握しながら生産技術部門としての工法開発、設備開発、あるいは技術移転や生産移管などの生産拠点計画を先行して検討することも重要である。これはマザーエ場機能の位置づけ論になってくる。
また、品種構成や生産量によってどのような生産方式を選択するかの視点も重要である。さらに、生産技術人材のグローバルな育成も必要になってこよう。マザーエ場の機能として人材育成は大きな位置づけになる。
もうひとつ重要な前提は、顧客にとって魅力的なものを生み出さない限り、生産機能は成り立たないということである。つまり、顧客にとって魅力的なものを創出する商品開発があって、そのプロセスの中での生産技術のあり方、役割を考えることが重要だということである。商品開発と生産の効果的連携は不可欠なのである。
このように生産戦略を検討するにはさまざまな視点からの検討が必要になってくる。事業戦略を具現化するための商品戦略、技術戦略、販売戦略等の各種戦略と生産戦略の位置づけや整合が求められているのである。単独で戦略が成立するものではない。企業がベクトルを合わせて事業展開していくためには、それぞれの機能が主体性を持って自らの方向を明確にするとともに、各機能の方向を整合させていくことも重要になる。
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