これからの生産技術者の役割【第3部】3. 製品生産マスタープラン(4)
4 コストダウンからコスト開発ヘ
商品開発期間が短縮化するなか、商品開発・設計段階で大幅なコストダウンを実施することは難しく、製品の短命化が進む現在、量産段階でのコストダウンはさらに困難である。「設計段階でコストの大半が決まる」とよく言われるが、最近の商品開発では、設計のもっと前でコストの大枠が決まっているのが現実だ。
商品開発・設計段階の「コスト設計」や量産段階での生産や調達の改善による「コスト改善」は重要だが、大幅なコスト革新をしようとするとその段階ではなかなか難しい。最近の商品開発では設計段階でのコスト革新余地が小さくなっているのである。そこで重要になってくるのが「コスト開発」という考え方である。
コスト開発とは、中期的な商品戦略、利益計画に基づき、将来の目標コストを達成するために、商品開発に先行して、各部門が連携、併行してコストを作りこむ取組みをいう(図表3-15)。「コスト開発とはコスト可能値を高める」こと。コスト可能値とは、商品開発がスタートする段階で、今回の商品ではどれくらいのコストダウンができるかという可能性の値をいう。
コストダウン目標は、通常は、コストダウン競合他社との関係や市場での値頃感と、どれだけ利益を出したいかの必要性から設定されるが、結果としてできた商品のコスト実現値はコスト可能値とほぼ同じになることが多い。ということは、大幅なコストダウンを実現しようとすれば「コスト可能値」を高めるしかない。この「コスト可能値」を高める取組みが「コスト開発」なのである。
コスト開発においても重要なのは、製品マスタープラン、生産マスタープラン、技術マスタープランの3つのマスタープランを、将来の目標コストに連携させることである。この3つのマスタープランを連携させて計画し、実現していくことが「コスト可能値」を上げていくことに繋がるのである。