これからの生産技術者の役割【第3部】1. 生産技術の「想い」の明確化 ── 受注型生産技術から提案型生産技術ヘ(4)
4 集まるだけではコンカレントエンジニアリングはできない
源流段階から関連部門が集まり、事前に課題を抽出し、その解決策を検討していくことで、手戻りややり直しが削減できるというのは概念的にイメージしやすい。しかし、では源流段階で関連部門が集まれば、コンカレントエンジニアリングがうまく展開できるかといえば、そういうわけではない。コンカレントエンジニアリングを展開している現場でよく次のようなことを目にする。
商品開発の構想段階で設計部門、生産技術部門、調達部門、製造部門が集まり、事前課題出しの検討を実施している場面で、設計者が企画構想を説明すると、製品のスペックは?構造は?図面はあるのか?などの質問が出される。構想段階は大まかで粗い。その構想に対して、他部門がこのような質問をしていたのではコンカレントエンジニアリングは成立しない。
これからスペックや製品構造を検討していく場面で、そのアウトプット自体を求めるのでは、関連部門が事前に集まって検討する意味はない。構想段階のこの場面で関連部門が知恵を出してくれるからコンカレントエンジニアリングが成立するのであって、これでは集まる意味がない。時間の無駄である。
なぜこのようなことが発生するかというと、集まった生産技術部門や調達部門が自分たちの将来構想(想い)を描いていないことに起因している。これからの生産拠点構想や新たな工法、設備の採用方針、生産方式に対する方針等を持っていないために、構想段階で開発設計に対して提案ができないのである。有効なコンカレントエンジニアリングを展開するためには生産技術部門としての中長期視点での「想い」、すなわち生産技術戦略や先行生産技術の開発計画が必要になってくる。構想段階で関連部門がそれぞれの観点からどれだけアイデア、知恵を出せるかが決め手なのである。