これからの生産技術者の役割【第3部】1. 生産技術の「想い」の明確化 ── 受注型生産技術から提案型生産技術ヘ(1)
1 生産技術を取巻く環境と課題
ここであらためて生産技術を取巻く環境を整理してみたい。
顧客の要求が高度化してきたことにより、提供する商品の機能・性能はますます複雑・高度になってきている。そうした高機能な商品を生産するために生産技術の役割はより重要になっている。また、多様化が進み、競合他社との競争が激化してきたことから、開発の短納期化や低コスト化に対する要望も高まっている。
その中で、開発設計支援ツールである3D-CADやCAEは導入されているものの、その機能を十分に使いこなせてはいないため、品質・開発期間短縮・コストダウンの同時要求に開発、生産ともに追いつけない状態になっている。企画・設計・生産技術・生産の連携が薄くなってきているのである。
また、海外生産の拡大に伴い、国内の生産技術者が海外の生産準備に追われ、生産技術者が慢性的に不足したり、技術の伝承が行われなかったりすることで、国内の生産技術力の弱体化を招いているケースも少なくない。熟練技術者が少なくなってきている現在、これらは生産技術部門にとって由々しき問題である。
このような環境のなかで生産技術部門が取組んでいかなくてはならない課題としては図表3-1に示すようなものが考えられる。
「源流段階から取組むことで手戻り・後だれを防止する」ためには、開発・設計と生産技術が連携しあい、技術・品質要件を整合させ、コスト要件の検討をコンカレントに実施することが必要である。また、生産準備段階では漏れのない全体最適な活動を展開し、効果的な初期流動管理を行うことも重要となっている。
源流段階からの開発設計と生産技術の連携を効果的に推進するためには、商品開発のための技術の引出し作りを開発設計、生産技術の双方で事前に実施しておくことが求められる。
「技術基盤の構築」は生産技術としてのコア技術を明確化し、自社が有する技術を体系化して形式知化し、伝承を図る仕組みを構築することの重要性を示している。それを実現するために、自社の技術の強みや弱みを明らかにして、今後必要な技術を設定し技術開発を展開する仕組みづくりが重要である。