これからの生産技術者の役割【第1部】4. これからの生産技術者に求められるミッション(5)
5 技術伝承と人材育成
“育てる”と“育つ”という言葉がある。人はさまざまな場でなにかを気づき、気づきから行動変革がおこり、やがて意識改革につながっていく。“育てる”とは、そこから本人が気づきを得る“場”を意識的に作り、与えることである。技術伝承とは、文字通り技術を後継に伝えることであるが、そう容易ではない。ものづくりの場では、生産技術者は一連の工程の作業を経験する必要がある。実際の作業体験を通じて、作業者の気持ちや作業の難しさ、しにくさを知ることができるはずである。多くの企業では、新入社員に工場実習と称してこれを経験させている。このときに生産技術者に目的意識を持たせることが大切である。
企業には技術標準があるが、書かれている内容は結果であり、作成された背景や理由が書かれていない場合が多い。標準は、作る過程が大切だが、その過程を体験した人が書いているので、背景や理由・前提条件は、周知のこととして書かれていないことが多い。
なぜこの標準を作ったか、目的や背景・理由をきちんと記述しておくことが大切である。標準を作るプロセスを経験して何が大切かを学ぶことも必要である。技術標準から学ぶことは多いが、実際の仕事では、標準の考え方を学びながら、標準と現実のギャップを考えながら仕事をする必要がある。