これからの生産技術者の役割【第1部 】3.
これからのものづくりにおける工場の姿(3)
3 工場機能革新
事業環境が変化しているなかで、工場には生産方針を長期的視点で設定し、実行していくことが求められ、従来の“製造拠点”としての位置づけから、事業を展開するための戦略拠点としての位置づけが重視されている。「ものの供給拠点」から「ものの価値コントロール拠点」への要求が高まっている。「ものの供給拠点」としては、顧客の要求するものを製造して提供すること、製品を使用するときに必要なサプライ品を製造し顧客に提供すること、使用した製品やサプライ品を回収して顧客にリユースとして提供するなどが基本機能である。
さらに最近は、こうした基本機能だけでなく、工場を“顧客に対して価値を提供するフロント”として位置づけ、「もの価値」だけではなく、「こと価値」提供拠点として位置づける方向にある。
たとえばDELLコンピュータでは工場を顧客要求への対応カスタマイズの最前線と位置づけ、顧客のカスタマイズ発注を工場が直接受け生産している。また、ソニーは、工場に顧客サービスの機能を設置して、メンテナンスサービスを提供している。製品だけでなく、顧客に、より近接したところで「こと価値」を提供しているのである。
工場の機能革新の代表例として、図表1-6に示すようにソニーEMCS(Engineering Manufacturing Customer Service)があげられる。「EMCS」とは、生産部門を本体から切り離し、設計から調達、物流、顧客サービスまで一貫運営する、設計・生産プラットフォームである。