これからの生産技術者の役割【第1部 】2.
これからのものづくりにおける工場の姿(1)
1 戦略の位置づけ
戦略とは何か?一言で表せば、「企業の持つさまざまな資源をどこにどのように使っていくのかを明確にしたもの」と定義することができる。戦略は基本理念に基づき、ビジョンを具現化するために必要なものである(図表1-5)。
基本理念は企業の存在価値や果たすべき使命を明確にしたものである。その意味で基本理念は普遍的なものである。一方、ビジョンは、基本理念をベースとして企業がある時点までに到達したい姿や目標を明確にしたものであり、戦略はビジョンを実現するために必要な方策や仕組みを明らかにしたものである。
戦略にはさまざまなものがある。自社の事業ドメインを定め、各事業のバランスをとり企業を成長させる仕組みや方策を明確にした企業戦略があり、この企業戦略をさらに具体的に展開するためにブレークダウンした事業戦略がある。事業戦略は企業戦略を受け、それぞれの事業部におけるビジョンを達成するための仕組みや方策を定めたものである。そしてこれらの企業戦略や事業戦略を具現化するために、企業の各機能分野(R&D:Research&Development、HR:Human Resource、財務、生産、営業など)においてビジョンを達成するための機能戦略を設定する。機能戦略には技術戦略、商品戦略、生産戦略および販売戦略などがある。
どのような戦略も、それは単独に存在するものではない。どんなに良い商品戦略があっても、生産戦略が貧弱であれば、ねらった製造品質やコストが達成できずに良い商品を創出することができなくなる。各種戦略はビジョン実現に向けて有機的に連携して構築されることで、事業を成功に導いていくのである。