これからの生産技術者の役割【第1部 】1. ものづくりとは(4)
4 ものづくリプロセス改革の3つのポイント
①リッチスタッフ
デジタル化を推進するためには、開発基盤を構築し、ライン業務の支援を専任とするスタッフが必要だ。今まで以上に役割を強化したスタツフという意味で、開発支援スタッフをリッチスタッフと呼ぶ。生産技術部門では、将来を見据えた業務革新や、ツールを活用するためのコンテンツ作り込み業務などの比重が大きくなっている。将来の商品開発の方向やそのための開発基盤などを検討するのがリッチスタッフである。
必要なデータを収集してデータベースを構築し、アップデートする、ツールを開発し活用する……などの活動の適切さが企業の競争力を決める時代になっており、ITも運用のレベルでの競争になってきているのである。
②開発プラットフォーム
ものづくり価値Vmの最大化をねらったものづくりを展開するためには、
- 商品開発に必要な情報や技術
- 標準ユニットや標準部品
- 各種ツールの活用および効率的な開発を展開するための仕事の仕方
が重要になる。これらを開発プラットフォームと位置づけ、そのイメージを図表1-4に示す。
過去の開発案件で発生した市場クレーム情報や、技術課題を解決したノウハウ、将来の技術動向、顧客動向をまとめた資料などの情報や、自社のコアとなる技術、評価・測定技術、さらに工法や設備開発に関する技術、生産に関連する技術、標準類……などを事前に準備することにより、開発の手直しや手戻り、繰り返しを排除することができる。
このように開発プラットフォームは、ものづくりを展開していく基盤でこれらを充実させることにより、ものづくりのアウトプットのレベルアップと効率化(開発期間短縮、開発工数低減、無駄の排除等)を図ることができる。
自社の特性や事業環境から、必要なプラットフォームのフレームワークを検討して優先順位をつけ、関連メンバーが一丸となってプラットフォームを作る仕掛けが必要だ。 上市した開発テーマの振返りを実施し、現状のものづくリプロセスの問題を明らかにして、今後、どのようなプロセスを構築していくのかを明確にしながら、必要なプラットフォームを位置づけていく。
開発プラットフォームはツール、仕組み、情報データベース、システム、標準類から構成されており、これらを構築していくことが、ものづくり競争力の向上につながる。
③Rapidプロセス(俊敏な開発プロセス)
ものづくリプロセスが追求する顧客に提供する価値の最大化をいかに効率的に、かつスピーディに実現するかの差が、企業のものづくり力の差となり、ひいては収益力の差となってくる。開発設計に求められるのは、
- 設計者のばらつきをなくし、開発設計に関わる工数を低減すること
- 生産技術力を強化し生産設計や金型設計に関わる工数を低減すること
であり、その際、従来製品開発の各フェーズで実施してきた試作をいかに少なくして、世の中に品質の高いものを上市していくかは重要な要素である。
また、製品のライフサイクルが短くなってきているなかで、タイムリーに商品を上市することが企業に求められている。従来は先行して商品を上市した企業が優位に立つとされてきたが、近年は、先行企業が必ずしも優位性を保てないケースも出現している。他社先行だけではなく、環境変化に対応しながらタイムリーに商品を創出できるかどうかが、経営を左右するようになっているのである。
このためには先読みした技術開発による、完成した技術の仕込みと、その技術を活用しながら、俊敏に顧客要求に応える部品、ユニット、評価方法、工法などの準備や、ツール(仕掛け)が必要である。これらの要素と仕掛けを有効に活用し、顧客要求にスピーディに対応していく俊敏な開発プロセスが必要である。このプロセスをRapidプロセスと呼ぶことにする。
リッチスタッフによリデータを整備し、ツールのシミュレーション精度を向上させ、開発過程における試行錯誤やそれに伴う多くの試作を低減して、俊敏かつスマートな開発スタイルを展開することがRapidプロセスの狙いである。