243-2 和洋折衷の技術――小屋組トラス構造
こうした屋根の構造はどうなっているのだろうか。基本的に日本式の家屋の屋根の構造は、小屋組みといわれる構造で、一般の民家や寺社などに見られる大きな建造物でも縦と横の組み合わせで、上からくるタテの柱を横木(はり)で支える、立の字構造である。
写真の朱の構造物は、改装なった薬師寺の屋根を支える部分の構造を撮ったものである。外にも構造の様子が見えているが、中を覗けば、そのままの構造で、合掌する屋根を支えている。
上からくる柱を横木が受け、その横木を両端で支えるというこの構造は、古建築ではかえる股と呼ばれる構造だ。寺社の建築物では手をかけて波カッコの形をしているが、基本構造は直線と同じである。
ところがこの構造だと、斜めになる採光部のガラス屋根がうまく支えられない。タテの柱を斜めに支える構造が必要なのである。
そこで採用されたのが、西洋建築の洋式小屋組み=と呼ばれる構造である
これをうまく利用して採光部となる合掌屋根の片側を切り落とし
明かりが入るようにしているのである。
日本式の小屋組みと洋式の小屋組みの違い。
アンタレススポーツをはじめ、多くののこぎり屋根がこの構造で作られている。斜めになる採光部の窓をしっかり支えるからである。

梶文彦氏執筆による、コラム「ものづくり 日本の心」です。
梶氏は、長い期間にわたりものづくり企業の国内外でのコンサルティングに携わり、日本製造業を応援しています。
写真撮影:谷口弘幸