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ものづくり 日本の心

これからの日本のものづくりを見据えるために、過去の出来事やその成り立ちに関する情報を提供するコラム。
発想を変えたい時やちょっとした仕事の合間にご覧ください。

242 旧上毛モスリン事務所(館林)――羊毛

すっきりモダンで懐かしい
 足利から東武伊勢崎線に乗って15分、館林へ。ここに、1908~10年(明治41-43年)にかけて作られた上毛モスリンの事務所棟があるので、これもついでに見て行こう。
 東武館林駅を東に出てまっすぐ進むと、市役所のある城町に出る。
そのまま市役所を左に見ながら道なりに歩いてぐるっと回ると、駅から10分ほど、左手に第二資料館がある。
その庭に、上毛モスリンの事務所棟が移築されている。
木造2階建て入り母屋造り。1階255㎡、2階208㎡。館林城の二の丸にあったのを1980(昭和55)年に現在地に移築したものだ。

 デザインは左右対称を基調とし、窓は上下開閉式、屋根の張り出しは浅く、洋風建築でありながら、基本は尺貫法の寸法で作られているという明治期の洋風建築の特徴を持ったすっきりしていながら、なんとなくモダンで懐かしい味がある。
 柱、階段の手すり、天井などに洋風のデザインを用い、屋根は洋式の合掌小屋組みトラス構造になっているなど、特有のデザインが施された貴重な建物である。

■薄地で軟らかく温かい――一世を風靡したモスリン
 モスリンとはまたの名をメリンスといい、羊毛の細い糸で平織した薄手の生地をいう。
木綿の場合は区別して綿モスリンと呼んだりする。薄地で柔らかく暖かいために着物や襦袢に用いられた。
明治以降、絹に変わってさまざまな素材が使われるようになったが、その触感の良さと暖かさからモスリンは大人気となった。
 最盛期の大正中頃には従業員2,000人の大工場として町の発展を支えたが、大正末期に倒産し、共立モスリン、日本毛織、中島飛行機などに変わり、工場の増改築が行われた。

■日本の近代産業発展の呼び水となって
残された写真をみると、当時の工場は、柱赤レンガの10,000㎡にわたるノコギリ屋根構造で、群馬県内でも有数のノコギリ屋根工場であったようだ。小さいながら明治期の洋風建築の特徴をよく残したものとして群馬県の重要文化財に指定されている。
この工場の屋根は、事務棟の屋根と違って片合掌ののこぎり屋根で、中心の柱を斜めに窓に利用したものになっている。
1953年のペリーの来航から始まり、1859年の横浜の開港が契機となって日本の近代化がもたらされた。
1972年に富岡製糸場が作られ、桐生-足利と広がってきた上毛地区の繊維産業の発展をうけて、この工場が作られたのが1908-10年。東武線が1899年に千住-久喜間で開通し、1907年には伊勢崎線が開通して久喜から先が伸びて館林駅が営業を始めている。

創設時にあった館林城の二の丸も、館林駅から10分ほど、東武線の開業を見越しての工場立地であったはずである。
伊勢崎線は、浅草から加須、羽生、東武動物公園と舘林に至り、このさき、福居、足利市駅、太田を経由して伊勢崎に繋がっている。JR両毛線との接続もよい、佐野、セメントの葛生に向かう線もここから繋がっている。ロケーションとしては発展性のある悪くない土地なのである。
生糸の輸出が、繊維産業の発展を促し、富岡-桐生-足利と北関東に産業が集積して、富国強兵を目指してきた国の機械産業等の発展の呼び水となった・・・まさにその流れの中で生まれた工場だった。
当時工場の様子から、新しい時代を築く近代産業として仰ぎ見るように脚光を浴びていた繊維事業の社会的な位置が理解できる気がする。


上毛モスリン事務所棟。左右対称ですっきりとした品の良いデザインである。


事務所の内部には、今は資料館として、糸繰や機織りなどの道具とともに、かつての工場に使われていた鬼瓦なども展示されている。


工場は、赤レンガ造りでノコギリ屋根を持つ10,000平方メートルの大工場だった。(展示されているパネル写真を撮影しました)

梶文彦 写真

梶文彦氏執筆による、コラム「ものづくり 日本の心」です。

梶氏は、長い期間にわたりものづくり企業の国内外でのコンサルティングに携わり、日本製造業を応援しています。

写真撮影:谷口弘幸


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