237-2 足利銘仙をいまに伝える――足利織物伝承館
織姫神社の足元の交差点のすぐ手前に、足利織物会館があり、この2階に、足利の織物の歴史を伝える「足利織物伝承館」がある。
足利の産業の歴史の中で特筆に値するのが、足利銘仙での成功である。大正時代まで一般的な衣料品として用いられていたのは着物で、まだ、石油をもとにした化学繊維がない時代、絹、木綿、羊毛が素材であり、絹は高級素材でもあった。
その衣を使い、先染め平織で大衆向けの銘仙を手掛け、独特のデザインが大正モダン
と呼ばれる流行を生み、足利の繊維産業を国内有数の産地に押し上げました。
最近は、洋風生活が定着する中で、和服はイベント時に着る民俗衣装のような位置づけになった感がありますが、足利では若いクリエイターたちによって、銘仙技術を生かした斬新なデザインなども生まれており、そうした足利の繊維産業の流れと銘仙の実物がここで紹介されています。
足利の織物の歴史を伝える「足利織物伝承館」。銘仙の実物とともに足利銘仙の歴史が展示されている。足利織物会館の2階にある。10:00-17:00、無料。
それまでの気持ち時に工夫を加え、斬新なデザインで大正モダンという言葉を生むようになった足利銘仙。不思議な感覚がある。

梶文彦氏執筆による、コラム「ものづくり 日本の心」です。
梶氏は、長い期間にわたりものづくり企業の国内外でのコンサルティングに携わり、日本製造業を応援しています。
写真撮影:谷口弘幸