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ものづくり 日本の心

これからの日本のものづくりを見据えるために、過去の出来事やその成り立ちに関する情報を提供するコラム。
発想を変えたい時やちょっとした仕事の合間にご覧ください。

218 荒船風穴と西上州の養蚕――かぶらの里は近代産業発祥の宝庫

 富岡のある西上州はもともと、養蚕業の盛んな地域だ。
富岡市、下仁田町、南牧村、甘楽町をかぶらの里と呼んでいることからも分かるように、この地域は、鏑(かぶら)川の流域に広がる地域である。
絹産業というだけでなく、近代産業の発祥の地という点でも、興味深い地域である。周辺地域の産業遺産をご紹介しよう。

■荒船風穴――養蚕に革命をもたらした日本の工夫(下仁田町)
 2014年6月ユネスコが世界文化遺産として登録した「富岡製糸場と絹産業遺産群」には、富岡製糸場の他に3つの遺産が含まれている。

そのひとつが荒船風穴である。
風穴とは、山中などにあって風が通り抜ける洞穴を指すが、養蚕業で言う風穴は、冬期に山中の風穴内に雪や氷が入り、それらに触れた空気が、地中の冷気とともに風穴内から吹き出てくるものをいう。
この冷気を天然の冷蔵庫として、蚕種(カイコの種を産み付けた種紙)の保存に利用したものである。
これは世界にない、日本独自の貯蔵法だ。

蚕の卵は暖かくなると孵化してしまうため、養蚕時期が限られていたが、冷気で貯蔵することで孵化時期を管理できるようになった。
これで繭の生産が年に複数回可能になり、生糸の生産量は飛躍的に増大した。その意味で風穴は絹産業の生産性向上と外貨の獲得に革命的な変革をもたらした。
富岡製糸場の東西の繭倉庫は、年間に使用する繭を貯蔵できる大きさだったが、風穴の利用で繭倉庫は小さくても済むようになった。
しかも冷蔵に費用が掛からないですむ、絹産業。あるいは生糸輸出がこんなに出来たのも風穴を利用できたおかげである。この利用技術は大発見だった。

■冷蔵庫の普及で役目を終える
国道254号、西上州やまびこ街道を西に進んで下仁田町南牧野の山中、神津牧場近くにあるのが荒船風穴である。
1905(明治38)年に1号風穴が作られ、09年に2号、14年に3号が完成した。
標高840メートルの山中にあるが、蚕種の貯蔵能力が110万枚と国内でも最大の規模だったために、全国から委託を受けて蚕種を保存した。
冷気の吹き出る風穴部分を深さ3-4メートル掘り、タテ6メートル×ヨコ7メートルほどの大きさで石垣に囲い、木製の棚を作って小屋にしたもので、吹き出る冷気は四季を通じて3℃前後と冷蔵能力は十分にあった。
ここは1964(昭和39)年まで、現役として使われていたが、冷蔵庫の普及によって委託が減少し操業を停止した。

荒船風穴へのアクセスは、神津牧場近くの駐車場から約800メートルの急坂を下る。坂道を往復した後では、近くの神津牧場の濃厚なソフトクリームがおいしい。




駐車場から坂道を下って20分。荒船山の山間部にある2号風穴。上から1号、2号、3号風穴と、5メートルほどの間隔で並んでいる。


岩の隙間から冷たい空気が流れ出てくる。


外気温は17.3℃でも、吹き出す自然の冷気で、風穴の中は3.2℃と冷たい。


駐車場に掲示されている案内図。クマが出没する地域で、クマよけの鈴が着いた杖も用意されている。


小屋が作られ、3室に分けられていた(群馬県所有)。

梶文彦 写真

梶文彦氏執筆による、コラム「ものづくり 日本の心」です。

梶氏は、長い期間にわたりものづくり企業の国内外でのコンサルティングに携わり、日本製造業を応援しています。

写真撮影:谷口弘幸


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