217 レンガの積み方
富岡製糸場の塀に使われているレンガの平均サイズは、220×106×58mmほど。日本標準規格が制定される前に製造されたもので、現代のレンガよりもサイズが大きい。つなぎはセメントではなく漆喰である。
レンガの建築物を造る際に、レンガの摘み方にはさまざまな方法がある。
(1)フランス積み
一段にレンガの長手と小口を交互に積む方式。長手と小口を中心を合わせて一段ごとに交互に積むもの。正式にはフランドル積みと呼ぶようだ。富岡製糸場の積み方がこれになっているのは、指導したブリューネやバスチアンがフランス人だったからだろう。
レンガがどのように積まれているかで、フランスの技術者が指導したのか、イギリスの技術者が指導したのが分かる。
短い面と長い面で焼き色を変化させると、独特な模様が出てくる。
(2)イギリス積み
レンガを並べる際に長手だけの段、小口だけの段と一段おきに積む方式。フランス式に比べると強度が強いと言われているが、強度的にかかわらないという意見もある。土木の構造物や鉄道の橋梁などに利用されることが多い。
(3)長手積み
レンガの長手のみを一段ごとにずらして積む方式。これだと2枚を並べて使わない限り奥行き(壁厚)が半分になるので、強度的には弱いと言われる。
(4)小口積み
長手積みと逆にレンガの小口だけを一段ごとに交互に積んだもので、通称ドイツ積みとも呼ばれる。東京駅のレンガがこの積み方をしている。小口積みは一辺が短いので局面などをつくるにも向いていて、井戸や煙突などの円筒形の構造物などによく使われる。
煉瓦はさまざまな積み方出されている。
富岡製糸場の東繭倉庫のレンガ。長手と小口が交互に積まれている=フランス積み。横須賀製鉄所で働いていたフランス人バスチアンの設計である。
横浜・赤レンガ倉庫のレンガの積み方=イギリス積み。明治44年に作られた。設計はアメリカ、ドイツで学び、大蔵省で設計を担当していた妻木頼黄。横浜正金銀行(横浜歴史博物館)などを担当

梶文彦氏執筆による、コラム「ものづくり 日本の心」です。
梶氏は、長い期間にわたりものづくり企業の国内外でのコンサルティングに携わり、日本製造業を応援しています。
写真撮影:谷口弘幸