ものづくり 日本の心

これからの日本のものづくりを見据えるために、過去の出来事やその成り立ちに関する情報を提供するコラム。
発想を変えたい時やちょっとした仕事の合間にご覧ください。

209 日本人が運営した近代建築――製糸場のその他の施設

こうして作られた富岡製糸場が、当時どのくらいの生糸を生産したのか、明確な資料はない。工場には、フランス人の指導者もつき、輸出するための検査員も来て、そのための宿舎も作られていた。
稼働を始めた当初は慣れない作業でもあり、機会の扱いも不慣れでなかなかうまくいかなかったが、指導をうけて慣れるうちに品質も向上し、十分に出荷に耐えられるものが作られるようになった。
当時としては進んだ設備で最新技術を導入したこともあり、国あげての期待があった。後述するが、その品質は、工女たちが富岡での作業を終わり、国に戻って国で生産した意図は、外国人商人からも高い評価を受け工学で販売できたというから、技術力は高かったのではないか。

以後、日本各地に器械製糸場が建設され、日本の生糸は世界に輸出されていく。
官営富岡製糸場は、国内での製糸業を広めるための模範工場であり、工場が当初の役割を果たしたあと、器械式の製糸工場はあちこちにたてられた。
その意味で、模範工場としての役割はしっかり果たしたことになるが、地方の工場では…官営工場程の高品質の繭も集められず、また器械製糸といっても、金属製ではなく木製だったりして、富岡製糸場ほどの効果を出せず、品質だけでなく経営についてもなかなか問題だあったようだ。
富岡製糸場自体も、漢衛星市場として、高品質の繭を仕入れたり、したこともあって、工場としてのマネジメント的には苦しみ続けた。

高コストのひとつであった、フランス人工女たちを1年で帰し、ブリューナも4年目の明治9年には帰し、創業4年目にして日本人だけの操業が行われるようになった。
日本人による事業化は一つの目標ではあったが、繭の買い取り、生糸の販売、どちらも投機的な要素を多分に持った取引であり、官営であるがための高コスト体質を脱することができなかったようだ。

この結果、明治26年には三井家に払い下げられ、その後、原合資会社をへて、昭和14年片倉工業の所有になる。同社は、設備・技術を更新しながら工場での操業を続けたが、昭和62年に製糸工場として115年の歴史を閉じた。
日本の生糸の輸出は昭和5年をピークに減少する。代わって増えてくるのが繊維・衣製品づくりの工場である。
桐生・足利の繊維産業が勢いを増し、一大集積地へと成長していく。
素材の輸出から加工された製品の輸出へ、その流れは開発途上国の自立への道でもあった。


工女館。ブリューナとともに、日本人工女に器械による繰糸の操作方法を教えるために、フランスから何人かの女性技術者が呼ばれていた。彼女たちが住んだ館。


検査人館から見た工女館。工女館は検査人館と独立していたが、後に2階渡り廊下(右)が作られた。


2階の周囲にベランダがつくられ、天井が井桁組になっている。


検査人館。出来上がった糸を検査する技師をフランスから招聘していた。検査だけでなく、技術的なアドバイスなどにもあたる品質管理責任者という所か。


完成した生糸を出荷する前に検査する専門家の建物、検査人館。コロニアル風の建築になっている。


製糸場の正面から入ってすぐ左に見えるのが検査人館正面である 


2階には、皇族などを迎えた応接室の貴賓室がある。


鉄水槽。繰糸用の水を蓄えるために明治8年に作られた鉄製の水槽(直径15 m、深さ2.4m)。南を流れる鏑川の水を使用したので、その水を溜めておいた。当時は、日本に製鉄技術がなかったので、鉄材はフランスなどから輸入したものと思われる。その素材を横浜製鉄所(船の修復と造船機械を作っていた)で加工し、鉄板を持ち込んで組み立てた。そのために、接合部には、艦船に使われるリベット接合が用いられている。鉄水槽の内側も傷みもほとんどない。素材と加工・処理の良さがうかがえる。


接合のリベット間隔は、水圧を考慮して上段が広く、下段は狭い。


右が繰糸工場、手前は繰糸作業で繭を温めるために使われた水を排水処理する池


土台に積まれた石。リベットの位置は石が穿たれているのがわかる 

梶文彦 写真

梶文彦氏執筆による、コラム「ものづくり 日本の心」です。

梶氏は、長い期間にわたりものづくり企業の国内外でのコンサルティングに携わり、日本製造業を応援しています。

写真撮影:谷口弘幸


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