ものづくり 日本の心

これからの日本のものづくりを見据えるために、過去の出来事やその成り立ちに関する情報を提供するコラム。
発想を変えたい時やちょっとした仕事の合間にご覧ください。

206 横浜の開港で生糸ブームが沸騰

 時代の背景を簡単におさらいしてみよう。
江戸時代、世界史の舞台からひっそりと隠れていた日本は、ペリーの来航をきっかけに1859年(安政6年)、函館・横浜・神戸・長崎・新潟を開港して外国貿易を開始する。
当時、欧米諸国の侵略を防ぐための急務は、殖産興業だった。
そのための外貨を獲得する目玉として考えられたのが生糸であった。開国とともにやってきた外国人商人たちが求めたのが生糸と繭種だったのだ。
江戸末期の日本は、養蚕も盛んで、生糸が多く作られていた。

ちょうどそのころ、フランス・イタリアでは蚕の微粒子病が蔓延し、修好通商条約が結ばれて貿易が行われるようになると、多くの商人が生糸とともに種繭の買い付けに日本にやってきた。
中国に買い付けにやってきていた外国商人たちが、日本でも養蚕が盛んであることを耳にして、様子を見に来て驚いた。良質の繭がたくさん作られていたのである。
外国商人が繭・生糸を求めていると聞いて、養蚕が盛んだった上州を中心に、多くの商人が横浜に集まり、生糸の取引が一気に沸騰した。

しかし、好況は長く続かない。
ブームにあぐらをかいた粗悪品も作られるようになり、市場に流れて、買いたたかれて生糸の値が崩れていく。
これでは外貨の獲得もままならない。政府にとって高品質の生糸生産は焦眉の急となっていた。

■国内産業を守れ
そんなとき、外国商社員から日本で器械式の製糸工場を造らせてほしいとの要請が出される。
これを許可すれば、やがて国内の製糸業は外国資本に駆逐される。
そんな危機感のなかで、幕府は、1870年(明治3年)自前で器械製糸工場の設立を決める。
大蔵省の役人だった深谷出身の渋沢栄一らは、指導者としてフランス人のブリューナを製糸場建設・運営の責任者として契約する。

ブリューナは、横須賀造船所を設計したバスチャンに工場の設計を依頼し、フランスに製糸器械を発注、突貫工事で建設を行って、明治5年10月に創業をはじめた。
この時に造られた製糸機械は蒸気機関を利用したもので、機械を利用した機構は繰糸を巻き取る作業だけで、現代の自動機と区別するために「器械製糸」と呼ばれている。

■最先端の設備とマネジメント
 いざ、工場を始めても大変だった。
 働いているのが、士族の娘である。横田英のように信州松代藩の家老(区長)の娘などもいたから、そもそも働くということが慣れない。しかも、上級の士族、家老の娘といえば、お姫様である。彼女たちが規則に縛られて、ばあやもなく一人で寮に入ってせいかつするのである。
 フランス輸入の繰糸器械の扱いも㎡慣れない。しかも売り物となれば品質に厳しい。働くうちに、数量を上げる、高品質の製品づくりを求められる、という具合で、とうとう慣れずにリタイヤした工女もいたようだ。
とはいえ、勤務のシステムは当時日本では珍しい週休制で、工場運営も女工を大切にするもの。遠足などの娯楽もあって、決して後の女工哀史などとはまるで比較にならない好待遇であったようだ。
富岡製糸場は、近代的な工場といわれるが、決して設備や装備が近代手kぃなだけでなく工場のマネジメント、運営システムも最先端フランスに学んで模した、最先端だったようだ。


繰糸場入口。


東西繭倉庫と隣接してコの字のタテの部分にある。現在は外されているが、創業当時は、右の東繭倉庫から貯蔵してある繭を搬入できるように2階でつながっていた。


内部は洋式の小屋組み、トラス構造という屋根を支える木組法を用いて、幅12.3メートルの間には柱がない。広い空間が保たれているために、本格的な自動機の時代になっても十分に工場として使うことができた。当時は、照明がないので、窓を大きくとり、外光を取り入れて、その明るさで操業していた。


当時の繰糸機 

梶文彦 写真

梶文彦氏執筆による、コラム「ものづくり 日本の心」です。

梶氏は、長い期間にわたりものづくり企業の国内外でのコンサルティングに携わり、日本製造業を応援しています。

写真撮影:谷口弘幸


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