事業戦略展開表による戦略の具体化、見える化
ものづくりグローバル標準マネジメントの実践
第4章 ものづくりマネジメントを支えるグローバル標準マネジメント(GPMS)の実践
(GPMS :Global Production Management Standard)
(3)事業戦略展開表による戦略の具体化、見える化
上述で検討してきた、4 つの方向性ごとに明確化された売上目標と達成のための戦略ストーリーを、次のステップとして、さらに行動レベルまで具体化していく必要がある。
そこで、図表4-4のように売上倍増目標をブレークダウンしていくことにした。手順は以下の様である。
事業部売上げ目標 ➡ 国内外目標 ➡ 4つの方向性別目標 ➡ 製品群別目標➡ 販売地域別目標 ➡ 顧客別目標(売上とシェアに関し、目標、成行き、目標と成行きのギャップ明確化)➡ ギャップを解消するための具体的施策(営業施策、開発施策、生産施策)……と議論し、明確にしていったのである。
この事業戦略展開表を作成することにより、戦略ストーリーが具体的に見え、各担当者の行動レベルに落ちていくわけである。
また、この表により売上倍増の戦略が見える化し、トップからボトムまで戦略の共有化が飛躍的に進んだ。
見える化されたことで、毎月行われる、経営陣との進捗状況検討会でも、 戦略全体を見据えた中で個別議論が進められ、事業部の目標達成のためにト ップが行動すべきことまで議論できるようになった。
事業戦略展開表を作成する際には、シェアにも着目し、成行きシェア50% 以下の製品については徹底的に競合製品情報を収集し、80%以上にするため の課題を明確にしたうえで、営業、開発、生産が連携して障壁を打破するた めの施策を具体化していった(4つの方向性の①の検討)。
従来は、営業と開発、営業と生産、開発と生産は対立しやすい構造にあっ たが、今回の展開では共通の敵が競合製品、競合企業となり、全社一体とな って勝つための施策を検討することができるようになった。
これも大きな成 果である。
前述したとおり、戦略は最終的に、顧客別に競合に勝つための施策として 具体化することが重要で、そのために検討する項目は以下のとおりである。
・営業系:競合企業、競合製品の情報収集、新製品のネタ探索、勝つための 製品スペック設定、新規顧客に入り込むためのQCDなどの要求 レベル把握、新天地での販売対応のためのM&Aなど
・開発系:営業が設定したスペックの新製品開発、既存製品の延長線上にな い新規製品開発、開発スピード向上のための業務改革など
・生産系:競合に勝てるレベルの品質革新、コストダウン、納期遵守、リードタイム短縮、新規生産拠点構築またはM&A
これらの項目を、具体的な行動レベルまでおとした各施策と、顧客別の目 標売上、目標シェアが整合しているか(各施策が実現すれば、目標が達成で きる見通しが立つこと)、十分にメンバーと協議し施策を確定していった。
(4)事業を躍進させる次なる新製品の開発
各事業部ごとに上述のような検討を進めていくのと並行して、研究所に対 して、事業を横断する開発テーマを設定するように経営陣から依頼した。
これは、事業部での検討では、どうしても既存製品をベースにした新製品開発 となってしまうので、一次的に売上倍増が達成できてもすぐに競合メーカーに追いつかれて、結果的に消耗戦に陥る可能性が高い。
そこで、各事業部が共通的に活用できる、既存製品に縛られない飛躍的な 新製品開発テーマ(例として、家電メーカーで無線型電源コンセントを開発 するようなイメージ)を、研究所から出すように要請したのである。
現在、 研究所では、3年後の上市を目途に開発計画を策定している。