事業部長のリーダーシップ醸成
ものづくりグローバル標準マネジメントの実践
第4章 ものづくりマネジメントを支えるグローバル標準マネジメント(GPMS)の実践
(GPMS :Global Production Management Standard)
(2)事業部長のリーダーシップ醸成
A社には、13の事業部がある。
売上倍増戦略の検討では、各事業部を束 ねる13人の事業部長が推進リーダーとなって、検討を進めている。
A社全体として売上2倍なので約3,000億円を狙うわけだが、これを経営会議にて 各事業部に割り付けし、各事業部長が責任を持つ倍増目標とした
まず、各事業部が検討したのは売上倍増の方向性である。
単に倍増と言っ ても、どちらの方向に進んでいけば2倍になるのか、漠然とアイデア出しを していっても、2倍には到達しない。
ここで検討したのは、売上倍増に向け て以下の4つの方向性であった(図表4-3)。
①既存製品を既存顧客に販売することで拡販を狙う
・既存顧客でのダントツシェアNo.1のために、競合製品との差別化QCD 戦略の具体化
②既存製品を新規顧客(新規用途)に販売することで拡販を狙う
・既存顧客のライバルや既存顧客の関係会社へ入り込むための、製品競争力(QCD)向上と営業戦略の具体化 ・既存の製品を、別の用途として販売するための用途開発
③新規製品を既存顧客に販売することで拡販を狙う
・既存顧客の購買品を総棚卸しして、自社で供給可能なアイテム発掘。
供給可能にするためにやるべき事を具体化
④新規製品を新規顧客に拡販することで拡販を狙う
・③の新製品を②の新規顧客へどう販売するかの営業戦略具体化
・自事業の強み(コア技術)を生かした完全新規事業立ち上げである。
事業部長は、開発、営業、生産のメンバーと4つの方向性について議論する中で、4つの方向性ごとに「売上目標」、「成行き売上(今までどおりの活動で得られる売上)」、「目標と成行きのギャップ」を数値的に明確化し、ギャップを埋めるための戦略ストーリーをメンバーと具体化していった。
従来は、開発、営業、生産が一堂に会し具体的な戦略ストーリーを検討していく場も無く、たとえあったとしても事業部長がここまでリーダーシップ をとってまとめることはできなかった。
事業部長が、リーダーシップをとっ たことによって、具体的に何をどんな手順で検討し、どんなフォーマットに まとめていくのか……が明確になったことが大きなポイントであった。