事業戦略と製造戦略
ものづくりグローバル標準マネジメントの実践
第3章 製造戦略構築と戦略実践のポイント
1)事業戦略と製造戦略
(1)事業戦略と製造戦略は一つのモデル化として統合
従来の製造戦略と異なり、今後の製造戦略では、製造ならではの知見を総動員し、戦略的考察を行うことが求められる。
・製造のモデルとしてどのようなものを構築するのか
・競合に対抗するためにどのようなビジネスモデルに組み上げるのか
・どのような戦略実践準備をしておくべきかなど事業戦略策定サイドだけでは考察しにくいようなものが重要になってくる。
ここに、事業戦略と製造戦略のすりあわせが必要となる。
つまり、売り方、攻め方、攻め込むスピード、コスト競争力を獲得するための外部活用法、差別化の図り方、投資のかけ方……などを統合した戦略・モデルを設計して向かってくる競合に、それ以上の準備がないと太刀打ちできない。
「うちにはいい技術がある、品質では負けない、総合力がある、培ったノウハウが違うよ」などと言っても、何の説得力も持たない。
複合化したモデルとして練り上げた戦略の前に、いい武器がある、玉がある、いい侍がいる……など単品のよさだけでは通用しないのである。
(2)事業戦略と製造戦略の融合(フィジカルコンテンツ化)
必要なのは、事業戦略と製造戦略の融合である。
近年になり「ものづくり」という言葉が急に普及した。
1990年代から使われ始めたとされているが、本格的な認知と活用は1999年3月9日公布、同年6月18日施行となった「ものづくり基盤技術振興基本法」以後である。
この「ものづくり」という言葉はWikipediaなどではやや誤解されて紹介されているように見受ける。
代表的なものは、「精神性や歴史を表す大和言葉」、「日本の伝統・古来からの強み」などであるが、ものづくり基盤技術振興基本法やものづくり国家戦略ビジョンを見れば、日本製造業に対する危機感・不安感から生まれ、高度成長期の規格大量生産型の製造業からのパラダイム
・シフトを促す言葉として活用されていることがわかる。
この言葉と事業戦略との関連性であるが、その「ものづくり国家戦略ビジョン」ではパラダイムシフトの一つのポイントとして、従来の製造業パラダイムは「モノ」であったが、今後のものづくりパラダイムでは「もの+目に見えないコンセプト+サービス」……と記されている。
このことは、今後の製造業は、単品勝負ではなく、システムの一環、またはパッケージ化された形で事業化していく必要性がでてきており、成熟化した社会では、事業の中心は製品ではなく、コンテンツ・システムの構成部品としての性質が強くなっているということを意味している。
かつては、事業戦略と製造戦略には垣根があったが、現在では、一貫したモデル・システムとして捉える必要性がでてきているのである。つまり、製造業としての事業は、製品や製造は単体で位置づけるのではなく、フィジカル・コンテンツとして一つのパッケージやシステム、モデルの構成部品として位置づけ考えていくことも必要となってきている。
その意味で事業戦略と製造戦略は融合させる必要があるのである。