生産技術の戦略的活用ー2つの質的戦略
ものづくりグローバル標準マネジメントの実践
第1章 グローバルものづくりで考えておくべきこと
(2)日本の生産技術の弱み
以上のように、「強み」があると思われる一方で、「ものづくり」に関する人材が昔ほど育っていない、技術情報の流出などで相対的には競争優位性のレベルは低下している……等の課題がある。
今後、優位でありつづけるため、さらなる強さの磨きこみが必要なってくると考える。
また、弱みについては一言で言えば、「強み」があるのに活かしていないことで、大きくは、
・独自の技術を保有しながらも、戦略に活かせていない
・グローバル展開の遅れが事業拡大に影響しているの2つがある。
①独自の技術を保有しながらも、戦略に活かせていない
これは、加工法などの固有技術を持ちながら、他社が追従しにくくなるようなブラックボックス化戦略や、特許戦略などに活かしきれず、競争優位な期間を長く取れずに事業的成果を小さくしていることなどがあげられる。
②グローバル展開の遅れが事業拡大に影響している
これは、そもそも事業戦略としてグローバル展開が遅れたことや、工程や作業の標準化があまりなされていないために、海外工場でのグローバル生産に際して製造部門作業者の育成に苦戦し、現地化が思ったほど進んでいないことなどがあげられる。
2)生産技術の戦略的活用-2つの質的戦略
ここで、広義での生産技術の戦略的活用について考えていきたい。
というのは、グローバル生産戦略の質的側面を深く考えていくことが、今後の勝ち残りの要素となると考えるからである。
今後、グローバル化が進む中で、日本の生産技術の強みを生かした戦略をとっていくためには、日本における生産技術のセンター機能が、意図的に戦略を実行していくことが大切であり、その際に取るべき質的戦略に
①オペレーショナル・エクセレンス戦略
②マネのできないものづくり戦略の2つがある。
戦略①オペレーショナル・エクセレンス戦略
オペレーショナル・エクセレンス戦略の1つの施策としてグローバル生産拠点を活用した「メガ・リージョン化」がある。
メガ・リージョン化とは、成熟国と成長国がリージョン内に構成され、役割分担を明確にした上で、特性(資産・技術他)を相互補完するものである。
例えば、生産能力の相互補完など、いわゆる「グローバル・リンク生産」もこの一つである。こうすることで、リージョン全体では設備などの資産を相互補完でき、FTAなどもこの運用の追い風となる。
また、為替変動により、サプライチェーン・ルートを敏速かつ柔軟に変えていくことも可能である。
このメガ・リージョンにおいては、日本は全体需給のコントロールなどを行う「アジア・リージョン・コントロール・センター」と言えるような機能へと化していくことが求められる。このように、次なるオペレーションを牽引する事項を開発していくことがセンター機能として日本に求められる(図表1-5)。