リスクを見ながら、ビジネスで成功するには
ものづくりグローバル標準マネジメントの実践
第1章 グローバルものづくりで考えておくべきこと
2)リスクを見ながら、ビジネスで成功するには
リスクに対処しながらビジネスで成功するという観点からは、BCP(事業継続計画)を策定し、アクションできるレベルに仕上げておくことが求められる。
特に今回の震災で学習したことは、想定範囲を広げ、深めて検討していく必要があるということである。
特に地震国・日本においては今後発生が予想される地震において教訓を活かすBCP計画が求められる。
(1)BCP策定で外すことのできない5つのポイント
このBCPを策定する際に、外すことのできない具体的なポイントについて、今回の震災対応を踏まえた上であらためて列記してみる。
①何よりも人の安全確保を第一優先に考える
何よりもBCPは従業員の安全確保を最優先することから始まる。
緊急時の避難方法を明確にすることからはじめて、作業中の災害発生を想定した危険個所の洗い出しと削減を考える。
事務所や工場、物流センターでは、まず重量物である設備や背の高いラックやキャビネットが転倒しないように、しっかりと床または壁に固定しておくことが基本となる。
都心部においては帰宅困難者対策やさまざまな手段を複数用意した安否確認システムの整備もポイントになる。
②事業継続のウィークポイントが何かを考え対策を行なう
BCPにおける最大の予防策は「二重化(バックアップ対策)」である。
ある拠点が被害を受けた場合に、別の拠点・メンバー・別の企業などで一時的に業務・事業の代行を可能にしておくことである。
複数拠点のある企業では、拠点間における業務の相互支援能力を拡大しておくことが有効な予防策であり、単一拠点の企業であれば、拠点内での被害最小化のための投資を中心に、一部機能の外部化の可能性を検討することがポイントとなる。
製品やサービスの供給を一定期間内に再開するために不可欠な機能は何か、またその機能を確保するための条件は何かについて多面的に検討を行なう。
特に自社のバリューチェーンを幅広く見渡して、ウィークポイントを把握しておくことは重要である。
具体的対策は、情報システムの整備、設備の稼働確保、調達先の複数確保、作業代替地や人手の確保、代替困難な重要仕入品の確保などであり、事業特性によりそれらの組み合わせを含めて多様なものとなる。
③インフラ停止時の対応策を検討する
今回の震災では電気・ガス・水道・道路・通信等のインフラについて、不全状態が長引いており、企業側としても自衛策を考えざるを得ない。自家発電装置の導入や燃料等の備蓄、重要資材、重要製品の在庫保有等を具体的に検討することが望まれる。
④企業の枠を超えたエリア内・エリア間でのBCPリソースの保有検討
今回のような大規模震災では、被害が広域に及び、燃料や物資不足が発生することが明確になった。
このようなケースでは、運用上必要な物資は自社内で確保せざるを得ないが、中堅以下の企業にとっては難しい課題である。
そのために備蓄・対策品目を地域内の周辺企業と共同保有するBCPリソースの共有化など、行政等の協力も得ながら企業の枠を超えた取組も視野に入れることが必要になる。
また単一拠点の事業者にとっては、地域を超えての他社との相互補助体制の可能性も考えられる。
すでに地理的に離れたエリアの同業種企業との相互支援アライアンスを検討している企業も出てきている。その可能性を検討することも有効である。
⑤企業としての災害支援活動をプログラムしておく
さらに、被災地の取引先に対し、自社としての支援活動をどのように行なうか社会的責任の視点からも、供給の早期化回復プランの検討が望まれる。
インフラや生活必需品を提供している企業はもとより、それ以外の企業においても、どのような商品やサービスをどの程度提供するのか、その場合にはどのように調達して、どのように現地供給を行なうのか、物資の支援だけではなく、企業の施設や敷地の提供について想定しておくことは、スムーズで有効な支援活動を可能にするうえできわめて重要である。