サプライチェーンの多階層化と技術の分散

ものづくりグローバル標準マネジメントの実践
第1章 グローバルものづくりで考えておくべきこと

2)サプライチェーンの多階層化と技術の分散

 
 サプライチェーンは分業が加速するに合わせて階層の「深さ」と「広さ」の双方に拡大していった。
分業はもともと、主に効率的生産活動の実施、もしくは付加価値の分配の役割を分担している。
多くの会社では、品質面でのトレーサビリティーという観点では分業化されたサプライチェーンは末端まで管理されているが、供給リスクという観点では管理しきれていなかった。

(1)供給リスクを回避する法  
 供給リスクの回避という観点からいえば、「セカンドソースの保有」とともに「復旧時間の短縮化」が重要なポイントとしてあげられるが、サプライチェーンが多階層化/分業化された場合、生産に関するノウハウ(設備技術、 管理方法他)が発注元にまで十分に届かない場合が多く、そのために復旧に時間を要した。  
 振り返ると成長期や需要期の外製化による分業で、技術・技能が多層化して分散し、発注元ではノウハウの保全が難しい状況になっていた。
そのため、 被災後の復興で、発注元と被災企業が協力して生産再立上げを行うにあたっては、協業はできたものの、その関係を十分に活かして効果的な復興ができたとは言い難い事例もあった。  
 また、ノウハウ自体が属人的であり、品質を決めるコア技術が明確化(定量化、手順化)されておらず、ノウハウを持った従業員が被災して出勤できないために、復旧に時間を要していることも報じられている。  
 これらのことから、改めて考え直さなくてならないことは、「生産ノウハウの明確化」である。
生産設備を復旧する際に「良品条件」が明確化されている会社は生産復旧が早かった。
良品条件の明確化は、通常生産時においても大切なことで、良品条件とノウハウの定量化・手順化・具体化の3つの要件を満たしていることが大切である。
言うなれば、あたり前のことをあたり前に実施していることが通常時/災害復旧時を問わずに大切なのである。

(2)自社内で生産移管を行う  
 一方、サプライチェーンではなく日本の自社内において、被災していない地域の工場に生産を移管し、出荷の維持を試みるケースもあった。
うまくいった場合とうまくいかなかった場合があったが、うまくいかなかったケースが意外に多かったと思われる。  
 ある会社の事例であるが、3月末に東京電力圏内が計画停電になった際、 関東地方の工場で生産していた同類のものを関西地域の工場に移管し、応援生産しようとしたが、その際に問題が起きた。
設備・治工具がほぼ同じ類型のものであっても使用できないアンマッチに加え、情報システム面において作業オーダーや出荷伝票が出せないなど、意外なところに障害があり、応援生産の成立までに時間を要したのである。  
 筆者は職業柄、同じ会社の各地方工場を訪問することが多いが、同類の製品生産において工場間で意外に生産システム(設備・型・治工具、生産方式、管理方式、情報システム)が標準化されていないことが多い。
今後、グローバル同時立上げ、グローバル・リンク(負荷や為替に応じて生産地を変える) に向けても生産システムの標準化は不可欠と考える。  
 ここでいう標準化は標準化することで生産システムを改善しない、進化させないということではなく、水平展開することで、上位標準化を目指す意味があることを加えておく。
 これまで述べた「短期間で復旧する」「生産移管で代替生産を行う」ために必要なポイントをまとめると、
 
・ノウハウの明確化(=良品条件の明確化)
・生産システムの標準化 の2つが欠かせない。

これらの実施は生産技術部門及び生産スタッフが中心に行うことが求められ、より鳥瞰的な情報収集と改善視点で活動することが求められる。震災をトリガーにグローバル化・リスク対策の両側面から今後取組むべき課題と考えられる。


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