戦略を実践するためのマネジメントシステム
ものづくりグローバル標準マネジメントの実践
第3章 製造戦略構築と戦略実践のポイント
1)戦略実践の要諦は、グローバル共通戦略の世界同時推進達成
戦略の重要性が高まるほど、その実践スピードが重要になる。
したがって、戦略の実践方法を予め標準化・共通化しておくことが、実現スピードの観点から有効になることは前述した。
ここでは、実践にあたってもう一つの重要なファクターである戦略実践同期化について言及する。
生産戦略を実践するにあたっては、多くの場合、生産システムがネットワークを構築しているため、どこか一つだけ変えればそれで戦略の変化に対応できるということは少ない。
戦略に合わせて全体最適が図られているために、関連する多くの工程で変更が必要になる。
場合によってはグローバルに展開している生産ネットワーク全体について、能力の再整備、生産ネットワークの再構築が必要になることもある。戦略実践にあたっては、同期化が必要なのである。
戦略実践の速度向上、同期化には
①戦略展開基盤の標準化・共通化
②改革方法の標準化・共通化
③規格や基準の標準化・共通化
④外部企業とのインターフェイスの標準化・共通化
⑤戦略実践マネジメントの標準化・共通化
が必要となる。
①戦略展開基盤の標準化・共通化
これは、製造戦略の展開ツール、手法の標準化・共通化を意味する。
グローバル展開した各地域の開発拠点、生産拠点、物流拠点に対して本社サイドで予め戦略展開のツール・手法をグローバル標準マネジメントとして統一化し、なじませておくことが実践同期化の大前提となる。
戦略は情報であるため、その情報展開方法、伝達方法の設定は不可欠である(図表3-4)。
②改革方法の標準化・共通化
改革方法は個別化というイメージもあるが、製造戦略における改革方法はある程度類型化が可能である。
たとえば、リーン生産システムの導入、サプライヤー管理システムの導入……など、本社サイドまたはものづくりのマザー機能部門で生産マネジメントメソッドとして正式採用し、普及推進、レファレンスモデル化することが求められる。
③規格や基準の標準化・共通化
各消費地向け製品で要求品質レベルが異なる場合、どのように対応するかという問題への事前整備が規格や基準の標準化・共通化である。
日本市場は世界的に見ても品質に関する要求レベルが高く、そこで鍛え上げられた日系製造企業にとって品質は高くすることこそあれ、低くするなどもってのほかという不文律が存在している。
そのため、グローバル供給を前提に自社製品に対する品質規格・基準は予め再整備することが求められる。
これが調整されず、単一の日本規格・基準でものづくりを行った場合、コスト競争力を失うことになる。
この他、標準類の種類や記載方法などの標準化・共通化はいうまでもない。
④外部企業とのインターフェイスの標準化・共通化
上記、規格・基準の標準化・共通化に近いが、現在では製品ラインナップの低リスクで急速な拡張が必要になる場合がある。
その場合、多くは外部企業に協力を求めることとなる。
ODM/OEM/EMSの活用であるが、海外の外部企業へ協力要請する際の仕様書、契約書、基準の記述形式など各国特性に応じて整備しつつ、本社サイドで評価・管理できることが必要になる。
その意味で、外部企業とのインターフェイスの標準化・共通化は必須と言える。
⑤戦略実践マネジメントの標準化・共通化
最後に、戦略実践マネジメントであるが、これは戦略実践のルールや推進するための管理方法や体制を意味する。
上記であげたような4つの標準化・共通化ができ上がっていても、戦略実践のマネジメントは必要である。
実践中の戦略の進捗状況や方向性などの管理のルールを定め、そのルールに則って評価を行い、指示や支援を仰ぎ、課題を共有化・解決していく。
そのためのグローバルでの戦略実践における管理体制、権限・責任設定などを事前に明確に設定しておくことも重要なのである。