調達セッションコーディネーターその6|調達におけるリーダーシップの源泉とは?
すごく定性的な言い方をすると、社長が社長になるまでに調達領域のご経験をどれだけお持ちかだと思います。それによって調達への理解が違いますので。自動車系のお会社では、調達のご経験をお持ちの方が社長になっているケースが多いと思います。
2014 ものづくり総合大会(2014年2月19日~21日)の開催後におこなったインタビューです。
調達におけるリーダーシップの源泉とは?
安部
そのリーダシップを発揮しているリーダーの背後にあるもの、思いの源泉って何なのでしょう?ご本人の思いがあり、またトップの後押しなどもあったのでしょうか?
加賀美
トップの後押しを期待するというよりは、ご本人が経営の一部として、調達機能を革新していかなければ、という信念があったのだと思います。
その思いを軸に、人や組織を引っ張ってきているのだと思います。
安部
対・社内と、対・社外(サプライヤー)と、いろんな方向に配慮する、気を配るとう意味では、アンテナを立てる方向が多岐にわたる部署だといえますよね。
加賀美
そうですね。
安部
一番の説得材料、強さは「利益に直結する」、「この改善がそのまま利益に繫がる」という点でしょうか。
なぜ今まで社内的な立場が高くなかったのかということが、不思議なぐらいです。
ヤマハ発動機の井上氏ご本人にインタビューさせてもらった時にも思ったのですが、確かにいま加賀美さんがおっしゃったように、「我々から、我々が起点になって改革するのだ!」というようなリーダーシップを強く感じました。
加賀美
すごく定性的な言い方をすると、社長が社長になるまでに調達領域のご経験をどれだけお持ちかだと思います。
それによって調達への理解が違いますので。
自動車系のお会社では、調達のご経験をお持ちの方が社長になっているケースが多いと思います。
他業界では、そこに一つの壁はあると思います。
調達経験してない人からいうと調達部門は何をやっているか、すごくわかりにくいのです。
これが、一つの大きな問題だと思います。
わかりにくいままにしてしまっている調達部門にも責任はあると思います。
ずっと私はCPP-購買・調達資格に携わってきていますけれど、調達は非常に重要な役割と責任を担っているにもかかわらず、結果として経営における陰が薄くなってしまっている。
そこに、少しでも寄与できれば、というのが、私自身のひとつの思いです。
ただ、標準化が難しいのです。
外部環境がちょっと違うと、以前と似たようなシチュエーションでも、判断の仕方が変わってくることが多いのです。
数学のようにはいかないのです。
例えば、生産現場の改善は、現場のデータを取り、「こういうロスがあるよね」と。「こういうときには、こういう手法があるよね」と。
比較的セオリーに則って話は進めていけますが、調達は「情報を集めていくと、こっちがいいかと思うけども、でもこっちも間違いじゃない」というケースバイケースが少なくない。
変数が多くて難しい仕事ですね。
やったことがある人はわかるけど、やったことがない人はわかりにくいと思うのです。
それは、やったことない人達からすると「あまり近づきたくないな」という感じの部分だったりするし、社長の理解が深まることが、スピーディな改革につながる面はあると思います。
また、例えば開発購買で言えば、従来の調達部門は比較的文系の人が多かったですよね。
ですから、図面のない段階からの取組みは結構難しいわけです。
そこで、技術系の人を異動させて欲しいと希望をだす。
けれども、調達部長と開発部長は、同格だから綱引きになってしまいます。
開発だって人材は確保したいですから、裁定をする人が必要になる。
この人が理解してくれないと先に進まないわけです。
安部
それが、経営の調達理解ということですね。
加賀美
開発購買って、偉い人の理解があって「こうするのだと!」いったらポンと話が進んだりするのですよ。
でもそういう会社は多くないので、みなさん困っている。
だから講演された方達だって、きっと大変な苦労をされて進めていると思います。
安部
今でもでしょうか?
加賀美
今でも苦労されて進められていると思いますよ。