花王インタビューその2
2014 ものづくり総合大会(2014年2月19日~21日)の、開催前インタビューです。
つくる側からのイノベーションの5つのパターンとは?
安部
「つくる側からの新しい価値提案」というテーマは、社内でよく議論されているのでしょうか?
大谷
私の経歴として研究開発領域が長いことや学会での取組みの関係で、自分の関心が高いのかもしれません。
ひと言でいえば「イノベーション」を起こすということですね。
我々は、イノベーションを「技術」と「運営」の両輪で考えています。研究開発では、イノベーションを強く意識し、新しいものを作ろうとします。
一方で、いわゆる生産現場からもイノベーションをおこせるはずだと、そう発想しているわけです。
私の持論では、イノベーションというのはドラッカーの「強みをいかす」ことが基本だと思っています。
イノベーションというと突然生まれるものと思いがちですが、既存技術を組み合わせることでも、イノベーションは生まれることがあります。
これが一番やりやすいことで、既存技術はすでに完成・安定しているので、それを組み合わせることは完成度が高く且つスピード感もあります。
また、「既存技術を他分野に応用する」という考え方があります。
事例として化学工業分野で当然とされていたある操作を、食品事業分野に応用したら新しいものが生まれたこともあります。体系化された理論や技術を、経験や勘がベースの世界に展開すると、新しい技術になるということです。
つまり、「ある分野では既存技術だけど、分野を変えると全く新しい技術になる」というイノベーションですね。
新しい空間や場に展開する。また、装置や素材の組み合わせを変えると、新しいイノベーションをおこせるんですよ。
最後に、「生産システムの開発」からイノベーションを生み出すことができると思っています。
これらを5つのパターンと呼んでいます。
イノベーションを起こす技術者のメンタリティとは?
安部
日本の産業界全体が「ものづくり側からの価値創造」を期待している、という印象さえ感じます。
大谷
私もそのように思いますが、生産の領域はなぜか与えられた範囲内で粛々と活動する傾向がある気がしています。
何か「新しいものを創造してはいけない」ような意識を感じることがあるのです。
安部
それは、例えばしっかりと標準作業を守るというような雰囲気も影響するのでしょうか。
大谷
そうかもしれません。多くの会社は同じような印象をお持ちなのではないでしょうか。
本当は日々、ものづくりをしている人たちが一番そのヒントに接してるはずなんですけどね。そのような発想の転換やトレーニングも求められているのかもしれません。
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