特別企画セッションコーディネータインタビューその6|IEインストラクターを専任にした効果とは?
2016ものづくり総合大会の特別企画セッションコーディネータ 日本能率協会コンサルティング シニア・コンサルタントの石山真実氏にお話を伺いました。(以下敬称略)
IEインストラクターを専任にした効果とは?
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東芝キヤリアの講演はいかがでしたでしょうか。
石山
東芝キャリアはIEを改めて見直しています。
東芝本体がIEインストラクターという制度を持っています。
一般的には本体が「やれ」と言うから仕方なくやっていると、インストラクターを取得し、現場に配置して改善を命じてそれで終わりになるのが普通です。
しかし、東芝キャリアは、そういう扱いをしたらもったいないということで、これを専任体制にして全社に普及を図っています。
ここがやはり大きいと思います。
専任になりますから、IEの改善と普及だけが仕事です。
1日中、そのことだけをやらなければならないわけです。
他に忙しい仕事があるから、そちらに手が回らないという言い訳はできません。
たった4人の専任でも、その4人がいるから、全社が変わるわけです。
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部分最適にならないよう、全体最適という言葉を使っていましたね。
石山
全体を最適化するために、何をするべきか考えることが彼らの役割です。
その点でこの専任体制は大きな意味を持っています。
全体を見渡す立場にもいます。
IEはもう古い、専任体制はコストカットで難しくなるという時代に、あえてその2つをやることで国内生き残りができている事例でしょう。
そこが素晴らしいと思います。
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他社ではあまりないことなのですか。
石山
そうですね、我々もコンサルティングに行き、改革の推進を訴えますが、専任の人が出てくるケースはほとんどありません。
大体が兼任です。
我々が出向いたときに打ち合わせをし、我々がいなくなったときに日常業務をしながら少しでも宿題をこなしていくという感じでしょうか。
急に生産が増えて忙しくなり、宿題ができていないということもよくあるのです。
専任にすることでそれを防ぐことができています。
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トップの方も随分と思い切ったことをしましたね。
石山
専任にしなければいけないと思ったことが大きいでしょう。
最初は他と一緒で兼任からスタートしていますからね。
やはり兼任では十分に力を発揮できないので、専任にして全社に普及させると決断したところがポイントになったと思います。
結果として改善提案する1人ひとりのレベルも、IEを使って問題を定量化することがきちんとできるようになりました。
また、IEインストラクターを専任化しても社内で浮いてしまい、「何だ、あいつら、肩で風を切って歩きやがって」とか、「現場のことを全然分かっていない」と思われてはいけません。
これには解決策が2つあります。
1つはIEインストラクターと現場の人が同じ言語で同じ思想を持てるように、導入、初級教育をすることです。
もう1つは現場の中にIEインストラクターを置くことです。
東芝キャリアは専任4人で、トータル16人といっていました。12人のインストラクターは現場にいるわけです。
同じ能力を持った人が専任と現場にいて、社員全体とつながることが大切です。
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全員参画ですね。
石山
全員参画するときに、インストラクターが「何だ、あいつ」と思われないような仕掛けがきちんと入っています。
それで成果に繋がったのではないかと思っています。
この辺が東芝キャリアの工夫でしょう。
新しい視点を提示する人をつぶさないためにも、全体を通して考えるとやはり人が大切です。
ローカルの人材を信用して任せていくにしろ、IEの基礎技術を専任化してこれを使いこなせる人材を育てていくにしても、基盤は仕組みではなく人です。
人がきちんと育ち、動くことでそれぞれの会社の成果が出ていると感じました。
人づくりやものづくりの関係が適当になってしまった会社は結構あります。
それに対し、この3社は人づくりもものづくりも並行して実践的に進めています。
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どちらも大事ですよね。
石山
逆にいえばそうしているからこそ、結果が出ているのだと思います。
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本日はどうもありがとうございました。
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