横須賀製鉄所――造船王国・日本の源流
6.戦艦三笠と猿島――日露海戦を勝利に導いた旗艦と要塞の島
040>現存する唯一の戦艦
明治以来、海軍が建造・購入し、就役した艦船のほとんどが残されていない。廃船になった船は解体され、鉄材は再利用されるから残ることはない。帝国海軍が誇る、史上最大の戦艦、大和(263m、69,000トン)や武蔵(263m、62,000トン)も、第二次大戦中に敵の攻撃を受けて沈没したまま、海の底に眠っている。最近、武蔵が見つかったと報告されているが、海中の遺跡として、簡単に引き上げることはできないのだ。
また、大和の前の、フラグシップだった長門(225m、39,120トン)は、沈没せずに終戦まで生き残ったが、戦後、米国に接収されて、1946年ビキニ環礁で行われた核爆発の実験「クロスロード作戦」の標的として使われ、第2回目の核実験を受け7月29日に沈没した。
記念館「三笠」は、残されている唯一の帝国海軍時代の戦艦であり、貴重な資料でもあるのだ。残念ながら、主砲、副砲は、除籍する時点で取り外されたので、現在、装備されているものはすべてレプリカだが、三笠艦上で見る限りそれをほとんど感じない。なにより、その質感・重量感に圧倒される。砲室のハンモックの様子などを見ると、砲の横で寝起きした砲兵の思いなどが伝わってくるようだ。これはぜひ一度見ておきたい。

梶文彦氏執筆による、コラム「ものづくり 日本の心」です。
梶氏は、長い期間にわたりものづくり企業の国内外でのコンサルティングに携わり、日本製造業を応援しています。
写真撮影:谷口弘幸