横須賀製鉄所――造船王国・日本の源流
2.ヴェルニー公園――軍港横須賀を見渡す歴史の公園
012>150年前のスチームハンマー
横須賀製鉄所は後に横須賀造船所と名前が変わるが、当初、製鉄所=鉄製品を加工する工場という意味でつけられたもので、実態は造船所だった。周辺に協力工場があるわけではないので、パーツから道具まですべてを工場で内製しなければならなかった。肝心の鉄鋼だけは、国内では入手できなかったために、フランスなどから輸入された。
工事が始まったのは1864年8月。小栗上野介やヴェルニーの計画は、単に造船所を作るだけでなく、一大軍港を作るという壮大なものだった。モデルにしたのがフランスが誇る軍港ツーロンだった。
ヴェルニーは、横須賀製鉄所の建設計画書を提出した後、いったん技術者の採用や機械類の調達にフランスに戻るが、その時に調達された設備の中にあったのが、いま、ヴェルニー記念館に展示されている2機のスチームハンマーである。
1機は門型の3トンのスチームハンマーで、もう1機は0.5トンの片持ち型ハンマー。熱した鋼鉄を型の中に入れて、上記の動力を利用して持ち上げたハンマーを落として押し固める、鍛造品を加工する設備である。この設備で使った金型や金ハシなども館内に展示されている。いずれもオランダ製で、1865年製の銘が入っている。
館内には、横須賀製鉄所や近代の歴史遺産を紹介する映像、体験学習用機材、スチームハンマーの稼働模型なども展示されている。詳細な資料も用意されていて、受付で申し出るといただける。ご興味のあるかたは、一読されるといい。

梶文彦氏執筆による、コラム「ものづくり 日本の心」です。
梶氏は、長い期間にわたりものづくり企業の国内外でのコンサルティングに携わり、日本製造業を応援しています。
写真撮影:谷口弘幸