横須賀製鉄所――造船王国・日本の源流
1.150周年を迎えた現役ドックの宝庫
007>ペリーがよこした降伏用の白旗
造船所・軍港建設計画は、幕府が新政府に代わっても、殖産興業・富国強兵策として継続される。しかし、なぜ幕府はそんなに軍拡に急いだのだろうか、理由の一つに、1853年に来航したペリーの仕打ちがあった。
ペリーは、幕府との交渉に際して、開国を勧める米大統領フィルモアの親書とともに白旗2枚と個人的な書簡を渡しているのだが、その書簡には、
「通商を願い出ているが、もし不承知ならば、国法に従って防戦せよ。必勝は我らにあり、和睦を願うならこの白旗を押し立てるべし。炮を止め艦を退て和睦する」
と記されていたという。開国せよ、さもなくば攻撃するぞ、という脅しである。
無茶な話だが、当時は、こうした列強の無理がまかり通った。時代は、艦船の大型化がすすみ、欧米諸国は競うようにアジア、アフリカへ進出して、領土獲得と貿易をめざした。当時、欧米諸国が決めた国際法「万国公法」によれば、世界の国は3つのカテゴリーに分けられていた。
①「文明国」:欧米諸国。独立した自治権をもち、征服・割譲・開拓などで新たな領土を獲得し、相互に承認することで所有権を確定する権利を有する
②「半文明国」:日本などアジア諸国。部分的には承認されるが、不平等条約が「文明国」の主導で結ばれ、拒む場合には武力によって受け入れさせることができる
③「未開地」:アフリカ諸国など。「無主の地」(所有者のない土地)とされ、「文明国」が「先占の原則」でそこに植民地を自由に設定できる
とされていたのである。
19世紀後半は、欧米の列強が我がもの顔で七つの海を牛耳っていたのである。

梶文彦氏執筆による、コラム「ものづくり 日本の心」です。
梶氏は、長い期間にわたりものづくり企業の国内外でのコンサルティングに携わり、日本製造業を応援しています。
写真撮影:谷口弘幸