横須賀製鉄所――造船王国・日本の源流
1.150周年を迎えた現役ドックの宝庫
001>知られざる横須賀――明治日本の産業革命遺産
2015年7月5日ユネスコの世界遺産委員会は「明治日本の産業革命遺産 製鉄・鉄鋼、造船、石炭産業」を世界文化遺産に登録することを決定した。
この遺産には長崎造船所や八幡製鉄所、韮山反射炉、釜石の高炉跡など、申請した23施設すべてが構成資産として認められたが、実は、このほかにも申請の中に入っていない、重要な資産・遺跡がある。それが、ここに紹介する横須賀製鉄所だ。
本来ならば、官営の造船施設であること、明治3年に作られた我が国初の石づくりドライドックが残されていること、さらに、ここで育った造船技術者が後に全国でドックや戦艦づくりに携わって造船王国日本を生み出す原動力になったこと・・・などから、ここが真っ先に候補地に選らばれるべき施設なのだ。
なによりも、地震大国日本で、1871年の建設以来140年を経過して、なお現役で使われているドックの質の高さは、産業遺産として文句のない重要文化財級の価値をもつ。
なぜ、登録資産に横須賀が入っていないのか、理由は、米軍の基地内にあって公開されておらず、保存も自由にならないためだ。致し方ないが、非常に残念である。このドックを見る機会は、年に何度か、実施されている公開日に可能だ。戦争や軍備の是非については、様々なご意見もあろうと思うが、その前に、先人の技術遺産として、ぜひ、見ていただきたい施設である。
ここでは、こうした貴重な知られざる横須賀製鉄所とその関連遺産を見てみよう。

梶文彦氏執筆による、コラム「ものづくり 日本の心」です。
梶氏は、長い期間にわたりものづくり企業の国内外でのコンサルティングに携わり、日本製造業を応援しています。
写真撮影:谷口弘幸