「日本のものづくりは、世界の財産である」(90)|第八章 ものづくりの将来性と潜在力 〜ガラパゴス化する?
日本のものづくり〜
日本は世界でもトップクラスの科学技術力と生産技術力を持っています。グローバルに比較しても、日本の製造業の競争上の優位性は高いはずですが、どういうわけか、市場では負けるという結果になってしまっています。そのため、日本のものづくりは、ガラパゴス化していて、グローバルの競争に勝てないという意見が聞かれます。
ガラパゴスといわれる理由として、
①日本の家電製品などが中国や韓国などの企業にシェアを奪われて苦しんでいること、
②日本企業からイノベーションを興すような新製品が生まれていないこと、
の2つが言われています。
家電製品などの不振から、日本のものづくりはグローバルな競争に勝てない、日本のものづくりは時代おくれでガラパゴス化している、などと言われるのですが、これはちょっと違います。「ものづくりが負けている」わけではないのです。
「ものづくり」が負けていると言われると、ものづくり力、つまり研究開発力や生産技術力、製造技術力が劣っているようにいわれますが、果たして本当にそうでしょうか。
がガラパゴス化しているのは、日本のものづくり技術力ではなく、高度なものづくり力を持ちながら、それを生かしたマネジメントが行われていないことが問題なのです。
つまり、「日本のものづくり」が負けているのではなく、製造業のマネジメントが負けているのであって、問題は高度なものづくりの力を活かせない「マネジメント」にあるのです。
いつまでも日本の企業が、技術的に成熟しきった家電を作っているのが正しいか、ということも、あるでしょう。縫製業を考えてもこのことは分かります。高度な技術よりも、単純労働力が求められる縫製業は、低開発国が産業化をめざす最初の関門ですが、それを日本でいつまでも続けることが有効でしょうか。同じように考えれば、家電のある部分は、当然、縫製業に続く産業領域として、開発途上国が力を入れてくる領域で、必然的に、そうした領域は、先進国から消えていく運命にあります。

梶文彦氏執筆による、コラム「ものづくり 日本の心」です。
梶氏は、長い期間にわたりものづくり企業の国内外でのコンサルティングに携わり、日本製造業を応援しています。
写真撮影:谷口弘幸