ものづくり 日本の心

これからの日本のものづくりを見据えるために、過去の出来事やその成り立ちに関する情報を提供するコラム。
発想を変えたい時やちょっとした仕事の合間にご覧ください。

梶文彦の「ものづくり 日本の心」(26)|第二章 日の丸演説―日本のものづくりの出発点 〜文明の最高点に到達せんとする〜


伊藤は次のように続けます。

 我国民は、読むこと、聞くこと並に外国に於て視察することに依り、大抵の諸外国に現存する政体、風俗、習慣に就き一般的知識を獲得したり。今や外国の風習は日本全国を通じて諒解せらる。今日我国の政府及び人民の最も熱烈なる希望は、先進諸国の享有する文明の最高点に到達せんとするに在り。この目的に鑑み、我等は陸海軍、学術教育の諸制度を採用したるが、外国貿易の発展に伴うて知識は自由に流入せり。

 日本は、アメリカとの修好通商条約を結んだあと、イギリスやロシア、オランダ、フランス、など五か国と修好通商条約を結んだことで、外国との貿易が開始され、諸外国の政治・風俗・習慣についての情報が入って来るようになりました。

そうしたことから、諸外国の事情はよく理解している。そして、各国の風習なども日本全国に知らされていると述べた後、伊藤はこの視察を通して、日本は何をしようとしているのかを、「今日我国の政府及び人民の最も熱烈なる希望は、先進諸国の享有する文明の最高点に到達せんとするに在り。」と明確に述べています。

つまり、先を進む欧米先進国に追い着き、トップに並びたい、といっているのです。当然、追い付けると思っているのでしょう。圧倒的な差を自覚している中で、この自信はどこからくるのでしょうか。

我国に於ける改良は物質的文明に於て迅速なりと雖(いえど)も、国民の精神的改良は一層遥かに大なるものあり。我国の最も賢明なる人々は、精密なる調査の結果、この見解に於て相一致す。数千年来専制政治の下に絶対服従せし間、我人民は思想の自由を知らざりき。物質的改良に伴ふて、彼等は長歳月の間彼等に許されざりし所の特権あることを諒解するようになれり。尤もこれに伴ふ内変は一時の現象に過ぎざりき。我国の諸侯は自発的にその版籍を奉還し、その任意的行為は新政府の容るる所となり、数百年来鞏固に成立せし封建制度は、一箇の弾丸を放たず、一滴の血を流さずして、一年以内に撤廃せられたり。かくの如き驚くべき成績は政府と人民との合同行為に依り成就せられたるが、今や相一致して進歩の平和的道程を前進しつつあり。中世紀に於ける孰(いず)れの国か戦争なくして封建制度を打破せしぞ。
  此等の事実は、日本に於ける精神的進歩が物質的改良を凌駕するものなることを立證す。

我が国にとって、西欧の物質文明の導入は大きな成果を上げているが、我が国の国民にとっては、それよりも、精神的な改良効果の方が、はるかに大きくて重要であり、このことは多くの人間の認める所となっている、と述べ、物質的な改良とともに、長い間許されなかった精神的な自由さも得た。そして、諸大名は、自主的に版籍を奉還し、数百年続いた封建制度は、一箇の弾丸を放たず、一滴の血を流さずに撤廃された、と語ります。

数百年来の鞏固な封建制度が一年もかからずに撤廃され、国民と政府の協力で、平和の裡に国づくりが進んでいる。世界に、戦争無くして封建制度を打破した国は他にあるだろうか。この事実から、日本という国は、物質的な進歩をはるかに凌駕して、精神性という点では進んだ国である……と伊藤博文は誇らしげに訴えているのですね。

政権交代にあたっては、鳥羽伏見の戦い、彰義隊との上野戦争、戊申戦争、函館戦争……などがあり、多くの血が流されました。しかし、肝心の江戸城の開城、大政奉還、版籍奉還までは一滴も血を流さずに話し合いで行われました。伊藤はこのことの意味を訴えたかったのでしょう。

梶文彦 写真

梶文彦氏執筆による、コラム「ものづくり 日本の心」です。

梶氏は、長い期間にわたりものづくり企業の国内外でのコンサルティングに携わり、日本製造業を応援しています。

写真撮影:谷口弘幸


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