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ものづくり 日本の心

これからの日本のものづくりを見据えるために、過去の出来事やその成り立ちに関する情報を提供するコラム。
発想を変えたい時やちょっとした仕事の合間にご覧ください。

梶文彦の「ものづくり 日本の心」(22)|第二章 日の丸演説―日本のものづくりの出発点 〜サムライたちの海外留学〜


ペリーの来航によって、外国の先進国から学ぶ必要性を感じたいくつかの藩は幕府に留学のための渡航申請を出すのですが、はねつけられます。1854年、吉田松陰が海外への渡航を志願して黒船に潜り込みますが、幕府からも渡航禁止を伝えられていたため、黒船側が乗船を拒否し、松陰が捕縛されるという事件が起こります。

国内は相変わらずそんな状態でしたが、幕府は、通商条約の批准書の交換や海外視察の機会を利用して各国に使節団を派遣し、その際に、留学生も送り出します。その最初が1860年の咸臨丸での遣米使節団です。

しかし、一般の海外渡航は禁止されたままです。

こうしたことにいら立って、各藩は、勝手に留学生を送り出すようになります。

1863年に長州藩から井上馨、伊藤博文ら5名がイギリスに留学。1864年には新島襄がアメリカに留学。1865年には薩摩藩から森有礼、五代友厚ら19名がイギリスに留学、他に佐賀藩、土佐藩なども留学生を派遣します。

伊藤博文たち5人は、のちに長州ファイブと呼ばれるようになりますが、長州藩や薩摩藩が派遣したもので幕府が認めたわけではありません。基本的に、海外渡航は解禁になっていませんから、国の旅券もなし。厳密に言えば国禁を犯しての密航です。武士の命と言われたチョンマゲも落として渡航ですから、選ばれたサムライたちは、それこそ人生をかけた命がけの覚悟だったはずです。

この旅券なしでの留学を助けたのが、長崎に滞在していたジャーデン・マセソン商会のグラバーだったと言われています。それにしても、1858年に日米修好通商条約が結ばれ、翌59年に5港が開港してすでに数年が経過しています。

通商を可能にしておきながら、日本人が外国に売りに行くのはご法度、もっぱら外国商人が日本にやって来て、港で取引をさせるだけ、いかに幕府の意識が遅れていたかを示すものと言えるでしょう。

そんな環境の中で、庶民の意識はどうだったかといえば、「中津川の商人、萬屋安兵衛、手代嘉吉、同じ町の大和屋李助、これらの人たちが生糸売込みに眼をつけ、開港後まだ間もない横浜へとこころざして、美濃を出発してきたのはやがて安政6年の10月を迎えた頃である。・・・」。

これは、木曽路はすべて山の中である・・・で始まる島崎藤村「夜明け前」の第4章の書き出しです。

安政6年10月といえば、西暦に直すと1859年11月。幕府が通商条約で約束して5港を開港したのが1859年7月1日のことですから、木曽の山の中の商人でさえ、4か月後には、生糸を売りに横浜に出ようかという状況です。この、時流の流れを察知して遅れてはならじ・・・と迅速に行動する機動力、好奇心の旺盛さと庶民の物見高さに比べると、いかに幕府の対応は遅いことか。

遅ればせながら、1866年4月7日(新暦:5月21日)、多くの藩からの要望もあり、とうとう幕府は「海外行き許可の認証に関する布告」を発布します。

ここではじめて民間人の海外渡航が可能になるのですが、この時、日本国政府発行の第一号旅券を取得して海外に出たのは、幕府や雄藩の侍たちではなく、なんと手品師・曲芸団一行だったそうです。国内に来ていた興行師に誘われてアメリカ公演に出たそうです。

海外が宇宙と同じように謎の多い時代のことです。私たちの先輩は、いまの私たちが考えるよりも、ずっと好奇心旺盛で前向きな人たちだったと言えると思います。この間に、薩長などが英・米・仏・蘭などの国と薩英戦争、下関戦争・馬関戦争を経験。彼我の軍事力の格差の大きさを目の当たりにした幕府は、攘夷は不可能であることを知り、欧米から技術を学んで軍事力を強化するという方向に政策を転
換します。

※挿絵脚注
明治維新をさかのぼる5年前のこと。武士の命と言われた髷を落とし、後戻りのできない決死の覚悟であることがわかります。
(後列左;遠藤謹助、後列右;伊藤博文、中央;井上勝、前列左;井上馨、前列右;山尾庸三)

梶文彦 写真

梶文彦氏執筆による、コラム「ものづくり 日本の心」です。

梶氏は、長い期間にわたりものづくり企業の国内外でのコンサルティングに携わり、日本製造業を応援しています。

写真撮影:谷口弘幸


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