ものづくり 日本の心

これからの日本のものづくりを見据えるために、過去の出来事やその成り立ちに関する情報を提供するコラム。
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梶文彦の「ものづくり 日本の心」(10)|第一章「勤勉」は近代産業とともにやってきた 〜万博の華「錠前開けコンテスト」〜

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そんななか、アメリカ産業界から、イギリスなみの広大な展示スペースの要求が届いたことで、事務局は驚かされます。はたして会場を埋める展示品があるのか、博覧会事務局の心配のタネでしたが、いざ、幕を開けてみると、予想に反して、アメリカの人気がしだいに高くなっていったのです。

アメリカ人気の原因は、展示品の新規さにありましたが、もう一つ、同国の人気を高めたのは、同時に開催されていた錠前開けのコンテストでした。

当時、各国の技術力を目にみえるようにして競わせるイベントとして、博覧会場で錠前開けのコンテストが行われていました。コンテストはこんな仕組みで行われました。

(1) 各国は、自前の錠前を出品する
(2) 同時に、錠前製作の技術力をもった最高の技術者を派遣する
(3) 各国技術者は、他の国が出品した錠前の錠前開けにチャレンジする
(4) 各国の技術者が、コンテストに出品された錠前開けにチャレンジして、最後まで開けられない錠前を作った国が技術力の高い国、出品されたどんな錠前をも開けた技術者が、最も技術力が高いエンジニアに選ばれるというわけです。

競技は会期を通じて行われました。

毎日のように、今日は、どの国の錠前が開けられた、どこの技術者が○○の国の錠前を開けた、というニュースが話題になって来場者の人気をあおり、会期が進むにしたがって盛り上がったそうです。

この結果、アメリカ製の錠前が最後まで開けられずに残り、また、難攻不落を誇っていたイギリス製の錠前が、最後にアメリカの技術者に開けられてしまったことで、アメリカの技術がひときわ注目されるようになったのです。

「博覧会場では、イギリスが生んだ最も評判の高いプラマー錠を、鍵なしで開けた者に200ギニーの賞金がかけられた。これを『イギリスの錠ならどんなものでも2、3分で開けてみせる』と豪語して乗り込んだアメリカ人技術者G・ホップスが、さすがに2、3分というわけにいかなかったが、7月24日から取り掛かって8月23日についに開けてしまった。この大ニュースはただちにロンドン中に広まった。一方、彼が持参したニューヨークのデイ・アンド・ニューウェル社製の錠、および、やはりニューヨークのへリソグ社が展示した耐火金庫の錠のほうにも賞金がかけられたが、これは誰にも開けられないで終わった。ホップス錠(デイ・アンド・ニューウェル社製の錠:筆者注)が人の手で開けられるのは四年以上後のことである。」(『アメリカ職人の仕事史』)

これで一気にアメリカ・パビリオンの人気が沸騰し、万国博覧会は多くの観客を集めて大成功に終わったそうです。

ヨーロッパ諸国から後進国と思われていたアメリカ産業界が、こうして第一回万国博覧会で世界に向けて華々しいデビューを飾ったのでした。

梶文彦 写真

梶文彦氏執筆による、コラム「ものづくり 日本の心」です。

梶氏は、長い期間にわたりものづくり企業の国内外でのコンサルティングに携わり、日本製造業を応援しています。

写真撮影:谷口弘幸


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