【講演者インタビュー】2月23日 日立製作所 加賀田氏
2018ものづくり総合大会にてご講演いただく、日立制作所 Smart Tranformation Project強化本部 プロジェクト・マネジメント推進室 室長 加賀田 美朗氏に、日本能率協会の小高がお話をお伺いしました。
(以下敬称略)
成長のための構造改革とは?
JMA
本日はよろしくお願いいたします。
改めてお伺いいたしますが、「スマトラ」とは何でしょう?
加賀田
「Smart Transformation」が正式なのですが、略して「スマトラ」。
社内だけでなく、社外にもこの略称で定着しています。
JMA
中身のお話をお伺いしてもよいでしょうか?
加賀田
日立製作所では、長い間、P/L(損益計算書)を中心にした経営管理を進めてきました。
確かに利益がどれくらいあるのか、を見る点においてはP/Lは重要なのです。
ところがその状況に変化が生じてきました。
JMA
と言いますと。
加賀田
弊社は、2009年3月期に約7,900憶円の赤字を計上しました。
このような事態になると、まずは「止血」をします。
そのあとの、より成長するための投資を計画しようとしたときに、その原資を、事業を通じて用意する必要が出てきました。
そのためにも、「財務諸表」に対する認識について、「キャッシュフロー」の重要性が事業体に浸透してきました。
JMA
なるほど。
加賀田
いずれにせよ、従来の「財務諸表」に対する認識において、「キャッシュフロー」という考えが事業体の中に浸透してきました。
「スマトラ」はコスト構造改革としてスタートしました。
それに加えて、キャッシュフロー面の改革、つまり運転資金の極小化を目指す活動もスコープに入れています。
JMA
具体的にはどれくらい短縮されたのですか。
加賀田
2014年度までは80日台だったCCC(運転資金手持日数)を70日台に、1割程度短縮してきました。
これは売上高から考えると、非常に大きな額になります。
JMA
ところで、「スマトラ」はいつから始まったのですか?
加賀田
2011年度からだったと思います。
2010年度には、その「前座」のようなものが始まっていました。
高コスト体質の是正です。
弊社は、社会インフラ事業に強みがあります。
鉄道や発電所など、「止めてはいけないもの」や「絶対に安全でなければならないもの」を社会に提供してきました。
JMA
その分、コストは上がりそうですね。
加賀田
そうです。
ですが、弊社のお客様からの要望事項は、まずは「定常状態の維持」と「安全」です。
このような状況から、弊社内でも、「良いものは高くても買ってくれる」という認識があったかもしれません。
JMA
それをなぜ変えたのですか?
加賀田
今後の成長を考えると、グローバルで事業をすることは避けて通れません。
そのためにはグローバル市場で戦えるコスト競争力を備えていなければならず、旧来のコスト構造を変えなければならなくなりました。
JMA
なるほど。
それが「キャッシュを見る」こととして、「スマトラ」の対象になったのはいつごろですか?
加賀田
2013年、2014年からだったと思います。
その時点でも、グループや社内では、まだまだ改革しないことは山積していましたが、それでも、登山に例えると、5合目まで登ってきており、道が出来そうかな、というめどが見えてきました。
そこで、キャッシュを具体的に見るようになりました。
JMA
今回の「スマトラ」がグループ含めた御社に与えたインパクトは強かったのではないでしょうか?
強いがゆえに反発もあると思います。
なぜ、それができたのでしょうか?
加賀田
2009年に非常に大きな赤字を計上し、そのあと短期間に多くの事業ポートフォリオを改革したこと等を通して、おそらく昔の「日立」ではできないことをやっていると多くの人に目に映ったことは大きいと思います。
JMA
非常にドラスティックですね。
加賀田
そうですね。危機感が社内で共有されてきたことは、原動力のひとつだと思います。