ものづくり 日本の心

これからの日本のものづくりを見据えるために、過去の出来事やその成り立ちに関する情報を提供するコラム。
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「日本のものづくりは、世界の財産である」(85)|第七章 日本人の創造性と独創性 〜利益を期待しない学習――生涯学習先進国〜

図版原稿-7-85
寺子屋を語るときに、よく藩校が話題になりますが、藩校は寺子屋より年齢が高い武家の子弟を対象にした成人教育機関であり、多くが維新になって学校として改革されました。論語や漢学を教えた私塾も、多くは藩校と同じで成人学習機関です。

こうしたさまざまな形での教育が、江戸時代を通じて活発に行われましたが、そこで学ぶ人たちのねらいは、あくまでも教養を身に着けることにありました。
たとえば、中国でも多くの人たちが日本の藩校や私学と同じように論語や四書五経などを学びましたが、ねらいは役人になるための試験「科挙」受験を目指したものでした。欧米の教育もどちらかと言えば、教育を受けることによって地位や収入の増大をめざした投資型・資格取得型です。

それに比べて、日本では教育は、利益を目的としたものではありませんでした。庶民の寺子屋での学習を含めて、教育を受けるということが、経済的な対価や資格取得などのメリットを求める目的ではなく、あくまでも個人としての教養を高めること、自身の人間性や品格を高めることがねらいであったという特徴がありました。
元慶応義塾大学教授で教育学者の村井実は、明治維新以後の日本の目覚ましい近代化の根源力が、すでに江戸時代の教育にあったと主張して「江戸時代の教育」を著したイギリス人ドーアを紹介しています(「現代日本の教育・改訂版」村井実、NHK市民大学叢書37)。

ドーアによれば、「江戸時代の教育が、たんに「善い武士」「善い百姓」「善い町人」の教育に止まらず、常に、「より善い武士」「より善い百姓」「より善い町人」への教育であり、その意味で人々に向上の意欲を育て上げることができた。・・・・それが明治以後の日本の発展を、他に類をみないほどのものにした」、と指摘していると紹介しています。

言い換えれば、寺子屋や藩校での教育は、いまでいう生涯教育にあたり、このほかにも江戸の町では、さまざまな社や社中、連、講などが広く行われていました。プログラムは多様で、国学、蘭学、和歌、俳諧、さらには和裁や生け花、茶の湯、さらには芸能の家元制度まで多彩な組織を形成していました。男子だけでなく町家の妻女なども同様に、こうしたものを趣味のサークルとして楽しんでいたようです。

寺子屋での教育は、論語などの素読が主でしたから、科学的な知識は後れをとっていたとしても、江戸時代末期の庶民には、新しい西洋の知識を受け入れ、消化するための基礎的な素養は十分あったと理解していいでしょう。

梶文彦 写真

梶文彦氏執筆による、コラム「ものづくり 日本の心」です。
梶氏は、長い期間にわたりものづくり企業の国内外でのコンサルティングに携わり、日本製造業を応援しています。
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