ものづくり 日本の心

これからの日本のものづくりを見据えるために、過去の出来事やその成り立ちに関する情報を提供するコラム。
発想を変えたい時やちょっとした仕事の合間にご覧ください。

「日本のものづくりは、世界の財産である」(59)|第五章 科学より技術に向かう職人たち 〜時計の誕生で定時法に変えたヨーロッパ〜

と書いてきましたが、不定時法がヨーロッパにはなかったのかと言われればそうではありません。ヨーロッパでも、中世まで、不定時法が使われていました。生活のリズムとしては、日の出とともに活動を開始し、日没とともに活動を停止する方が、自然だからです。

しかし、14世紀なか頃に機械式の時計が作られ、町の中心にある市庁舎などに大時計が設置されるようになると、自然の成り行きとして、ほとんどの国で機械時計の進み方に合わせて生活時間が定時法に変えられるようになっていきました。

定時法への移行を早めたのが、1700年代のなか頃から始まった産業革命でした。工場労働で、給料算出と生産性向上の両面から、年間を通して変わらない1時間が求められ、より厳密な時間管理が不可欠になったからです。

こうしてヨーロッパ諸国では、機械時計が登場したことで、生活時間は不定時法から定時法へと変わって行きました。

これに対して、日本では、生活の時間を変えることをせずに、不定時法に合わせて時計を工夫することで、不定時法がそのまま続けられることになったのです。

機械時計がヨーロッパで発明されたのは14世紀中頃です。これがアジアにやってきたのは16世紀末から17世紀にかけてで、時代の先端を行くこのハイテクメカに対する対応法は、受け入れた国ごとにそれぞれ大きく異なっています。

例えば、中国では、最新のハイテクメカが広く活用されることはなく、宮廷内でむなしく時を刻む皇帝用の高級玩具の域を出ませんでした。このメカを目の前にして、自分達でも作ってみたい、というような動きにはつながらなかったようです。アジアの他の諸国でも同様です。

これに対して、日本では積極的にこれを工夫し、当時行われていた不定時法に合うように改良を加え、「和時計」と呼ばれる、世界的にも珍しい独自の機構を備えた時計を作り上げてしまったのです。

新しいきっかけを得て、現実の仕組みを大きく変えようとするヨーロッパと、仕組みを変えずに道具を工夫して現場で対応しようとする日本、この違いは、大きなものがあります。

定時法は、時間の進む速さは常に一定ですから、時計作りは難しくありません。そのため、ヨーロッパの国々では時計産業が発達し、時計を持つことは貴族たちにとってステイタスのシンボルになっていきました。

「フランスでは特に、時間を正確に測定するよりも、装飾的な価値が優先され、16~19世紀まで、高貴な人の肖像画に、置時計や懐中時計をこれ見よがしに描き入れることが流行した」と京都産業大学文化学部・成田知佳栄は『フランスにおける時計と労働』で書いています。

梶文彦 写真

梶文彦氏執筆による、コラム「ものづくり 日本の心」です。

梶氏は、長い期間にわたりものづくり企業の国内外でのコンサルティングに携わり、日本製造業を応援しています。

写真撮影:谷口弘幸


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