ものづくり 日本の心

これからの日本のものづくりを見据えるために、過去の出来事やその成り立ちに関する情報を提供するコラム。
発想を変えたい時やちょっとした仕事の合間にご覧ください。

「日本のものづくりは、世界の財産である」(47)|第四章 律令時代を支えた計数管理 〜税は都まで納税者が持参〜

図版原稿-4.014

製造業でものづくりや改善のお手伝いをしている人間から見れば、延喜式の作られた900年頃は、極めて単純で原始的な管理が行われていたと考えるのが普通です。

原始的なという意味は、大雑把な計画や目標はあるとしても、そこに達するまでのステップやプロセスが明確に示されていたり、また、標準的な作業法や、時間が明確に設定されていて、目標を達成するまでの緻密な計画がつくられているというようなやり方はされていなかっただろうということです。

なんといっても、時間の進行が不定時法で、朝廷が管理する漏刻と呼ばれる水時計で時間を計測し、太鼓や鐘を打って知らせていた生活リズムですから、緻密な時間管理そのものが不可能、管理全般が緩いものだったと考えるのが普通です。

ところが、それがそう大ざっぱに管理が行われていたわけではないようなのです。

例えばこんな具合です。

当時もいまも、国家を運営するための基本的な財源は税金です。

当時の税システムは、歴史で習ったように租・庸・調・雑徭(ぞうよう)の四種類で行われていました。

庶民は、計帳と呼ばれた住民基本台帳に登録され、口分田と呼ばれる田畑が貸与され、借りた面積に応じた税の納入義務を負いました。税は現物納付です。基本は米で、それが「租」です。

「庸」「調」は住民基本台帳に従って成人男子に課せられた役務で一般には絹・糸・真綿・地域の特産物などで納められていました。

「雑徭」は道路や建設に関する用役で、年に60日以下が課されていました。京などでは、都市整備のための工事も必要だったことから、庶民は庸・調を免除され、代わって道路工事などの用役に駆り出されることが多かったようです。

租庸調雑徭……ということばは、税の仕組みとして歴史で教わった記憶がありましたが、改めて資料を目にして、当時(西暦900年ころ)、計帳と呼ばれた住民基本台帳がかなりの精度で整備されていたということが、驚きでもありました。

税の徴収は国家運営の基本なので、計帳がしっかり管理されているのは、言われてみれば不思議ではないのですが、時代は900年ころのことです。少し前に菅原道真の意見で遣唐使が廃止され、大陸からの文化輸入を止めています。

驚いたのは計帳だけではありません。

税は、納税者が自分で都まで持参するというのです。ええーっ?交通手段も何もない時代に、全国各地から京まで、納税者がわざわざ持参するなんて、そんなバナナ?と思いましたが、事実は教えられたとおりでした。

交通手段がない、と思ってしまうところが現代人で、歩いて持参するという原始的な方法が意識からすっぽり抜けています。重い荷物があれば、馬に背負わせればいい、まさにその通りに、納税者自身が都の中央の役所まで、国府の役人に付き添われて歩いて搬送することになっていたのです。

行政組織は、中央政府―国―郡(里)という仕組みで、国には国司が置かれていましたが、国司には地方自治を行うほどの体制は整っておらず、業務はもっぱら徴税の管理にありました。税を徴収するのではなく、“納めさせる”ことが仕事だったのですね。

一人一人の納税者が都の中央政府まで運ぶのは不可能なので、村では人選をして、運ぶ代表者を決めて対応しました。これを運脚人と呼びました。

村から納めるべき物品を搬送するためには人手と費用がかかります。その間は自分の仕事もできません。なので、運搬する人のために中央政府が費用の一部や日当を支払います。

国司は費用を支払うために、中央政府に支払金額を申請することになりますが、そのためには費用算出の基準が必要です。それが京への運送費を支出する場合の算定基準として「延喜式」に明確に記されているのです。馬に荷を積むときの積む量も、産品ごとに明確に定められています。

梶文彦 写真

梶文彦氏執筆による、コラム「ものづくり 日本の心」です。
梶氏は、長い期間にわたりものづくり企業の国内外でのコンサルティングに携わり、日本製造業を応援しています。
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