ものづくり 日本の心

これからの日本のものづくりを見据えるために、過去の出来事やその成り立ちに関する情報を提供するコラム。
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「日本のものづくりは、世界の財産である」(46)|第四章 律令時代を支えた計数管理 〜情報の宝庫「延喜式」〜

図版原稿-4.012

東大寺の写経所で、遣唐使たちが持ち帰った経典の筆写が行われているころ、朝廷では「延喜式」の編纂が進められていました。

大化の改新(645年)後の3世紀ほど、律令時代と呼ばれる時代が続きます。律令時代という呼び名は、法令や規定をしっかり制定し、それに則って中央集権制度を運営した時代ということから、後世につけられた名前です。当時、法の整備は、「律」「令」「格」「式」の構成で行われていました。

「律」と「令」は、国家の根本法・原則法であり、「格」と「式」はその補充法、細目条例・規定というべきもので、『「式」は律令格などの規定の細則を定める付属法令であった』と延喜式研究の第一人者として知られた虎尾俊哉は書いています(「延喜式」日本歴史叢書、吉川弘文館)。

「延喜式」が編纂されたのは、延喜五年(905)から延長5年(927)にかけての通算22年。905年に詔勅が下りて編纂委員が任命されましたが、完成された時には、当初からの編纂委員は一名しか残っていなかったという長丁場の作業でした。

延喜式は、名前の通り「式」にあたり、900年前後の時代の司法・立法・行政の各役所が任務を遂行するために必要な細則が、全50巻に集大成されたものです。

その内容は、具体的には、朝廷の毎日の行事とその進め方から、各役所の年間行事や開閉門時間、朝廷用の衣服の縫製の仕方、さらには、税制とその徴収実務・刑罰……など、役所ごとの、業務遂行の細かな細則が、記載されています。

私はどちらかと言えば手当たり次第興味を持った本を読むという乱読タイプです。いろいろな書籍を読んでいるときに、ある行事や習慣などの出発点やルーツの話になると決まって「延喜式によると……」という表現が出てきます。

気になっていましたが、ずいぶん時代をさかのぼった資料で、とても素人が手を出せるシロモノではないと思い、読もうという気もおこらずにいました。が、ある時、たまたま立ち寄った書店で、前掲の吉川弘文館・日本歴史叢書『延喜式』を発見し、手にとってペラペラとページをめくってみて、おどろきました。なんと、さまざまな行政にまつわる数量規定がたくさん記載されているではありませんか。

読んでみて、目からうろこでした。規定されている数字を「標準」と読み替えてみると、私たちが教えられてきた日本人像とは、また別の面が見えてくる気がしたのです。

そこに紹介されている数量規定の細かさは驚きでした。これは業務規程、作業標準、標準時間そのものではないか、というのがその時の第一印象です。牛車に揺られて、光源氏が恋を語っている時代の100年も前に、役所の仕事が、細かな数値をつかって管理されていた、というイメージの落差が大きすぎたのです。

失礼をも顧みず、著者の虎尾先生にそんなことを書き、当時館長をされていた佐倉の国立歴史民俗博物館に押しかけて行ったのでした。

先生にとっては、歴史や民俗学の専門家ではない門外漢が延喜式に興味を持ったことが、面白かったようで、素人のぶしつけな質問に、半ばあきれながら、贅沢にも、博物館の応接間で即席の「延喜式講座」を開講してくださり、その後、館内をご案内いただきました。

私にとっては、例えば、天皇陛下を中心として政治を行う場所、体制を「朝廷」と呼ぶのは、天皇を中心として政務を執り行う役所が朝(午前中)だけ開かれていたから、などという、専門の方にとってはイロハのイのようなお話も、目からうろこでした。

以来、延喜式が気になり、暇な時間を利用して調べてみました。さいわい、自宅の近くにある神奈川大学が、地域貢献活動の一環として図書館を地域住民に開放するという制度を実施しており、これを利用させていただいて、『延喜式、上中』(虎尾俊哉、訳注日本史料、集英社)を拝見させていただくようになりました。読み進むたびに驚きの発見があり、まさに情報の宝庫でした(最近やっと、「上」「中」に続いて「下」巻が刊行されました)。

梶文彦 写真

梶文彦氏執筆による、コラム「ものづくり 日本の心」です。
梶氏は、長い期間にわたりものづくり企業の国内外でのコンサルティングに携わり、日本製造業を応援しています。
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