ものづくり 日本の心

これからの日本のものづくりを見据えるために、過去の出来事やその成り立ちに関する情報を提供するコラム。
発想を変えたい時やちょっとした仕事の合間にご覧ください。

梶文彦の「ものづくり 日本の心」(32)|第三章 豊かに広がるものづくりの世界 〜通奏低音を聴きとったペリー〜

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幕末から明治にかけて、わたしたちが西洋の科学技術を取り入れようとする以前に、私たちの中に流れている通奏低音ともいうべき、ものづくりの発露と資質を肌で感じとった外国人もいます。

黒船でやってきたペリーは、三度の来日で見聞きした記録を「日本遠征記」としてまとめています。その中で彼は、日本人のものづくりの巧みさを目の当たりにして、以下のように報告しているのです。

「実際的及び機械的技術に於て日本人は非常な巧緻を示してゐる。そして彼等の道具の粗末さ、機械に対する知識の不完全を考慮するとき、彼等の手工上の技術の完全なことはすばらしいもののやうである。」

「日本の手工業者は世界に於ける如何なる手工業者にも劣らず錬達であって、人民の発明力をもっと自由に発達させるならば日本人は最も成功してゐる工業国民に何時までも劣ってはゐないことだらう。・・・彼等の好奇心、それを自らの使用にあてる敏速さによって、・・・日本人が一度文明世界の過去及び現在の技能を所有したならは、強力な競争者として、将来の機械工業の成功を目指す競争に加はるだらう。」(『日本遠征記』ⅳ、岩波文庫)

粗末な道具を使いながら、巧妙な細工を仕上げる高い技能に驚きながら、ペリーは、日本が西洋の機械技術を学べば、やがて我々の強力なライバルとして台頭してくるだろうと書いています。江戸時代の日本人の手工業の巧みさから、現代の日本人の姿を予見したペリーの慧眼に驚きます。

同書では他にもあちこちで日本人職人の卓越した技術と工夫に驚嘆したと紹介されていますが、彼らの驚きは、単に仕上がりの巧みさ、工夫の質的な高さに対してだけではありません。

動物学者で標本採集に来日して大森貝塚を発見したエドワード・モースは、後に東大で動物学を教えながら日本各地を訪れ、日本人の生活ぶりをつぶさに観察・記録しています。

そして、『日本のすまい 内と外』(鹿島出版会)など貴重な著書をいくつか残しているのですが、著書の中で、モースは、洗練された細工が大きな都会の家屋だけにあったり、名の知れた作家によるものであったりするだけではなく、小さな農村の民家の中の小さな家具や道具についても、ひとつひとつの細部に、神が宿るような細やかな神経が注がれていることに驚いているのです。

そして、壁面一杯に装飾品を飾るアメリカの家庭とくらべて、日本の家屋では、家具も目立たないように配置し、装飾品もたくさんある中から一つだけを選択して季節や状況にあわせて表に飾る控えめさ、余分なものを徹底的にそぎ落した素朴なたたずまい、洗練された美しさに感嘆の声を上げています。

ペリーも、モースも、日本人のものをつくるという行為だけでなく、作られたものの扱い方、ものに対する愛情の持ち方、さらにはものをつくることを通して構築された文化や様式に秘められた背景をしっかりと見ています。

明治初めには、数千人のお雇い外国人が来日しています。そのほかにも、政治やビジネスなどで来日し、長期滞在をした人の数は、かなりの数にのぼります。

彼らの視点は、単なる物見遊山から学術的な深い考察まで、質的には玉石混交のようでしたが、なかには、ペリーやモースのように、当時の日本人の生活やつくられたものの中に響く、ものづくりの通奏低音を感じ取っていた人たちもいたのです。

梶文彦 写真

梶文彦氏執筆による、コラム「ものづくり 日本の心」です。
梶氏は、長い期間にわたりものづくり企業の国内外でのコンサルティングに携わり、日本製造業を応援しています。
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