ものづくり 日本の心

これからの日本のものづくりを見据えるために、過去の出来事やその成り立ちに関する情報を提供するコラム。
発想を変えたい時やちょっとした仕事の合間にご覧ください。

梶文彦の「ものづくり 日本の心」(27)|第二章 日の丸演説―日本のものづくりの出発点 〜.未だ創造的能力を誇る能はず〜


先進国から多くを学び、早く追いつきたいと言いながらも、教えてください……と卑屈になるのではなく、無血革命を実現した精神性の高さはどうだ!と逆にアピールしています。なんとプライドに満ちたことばでしょうか。

このあたりは、二度にわたるイギリス、アメリカへの留学で感じた思いをぶつけたものでしょう。留学で欧米の個人主義や物質的な利益を優先する風潮を知り、その結果、逆に我が国の文化が持つ精神性の高さが世界的にも誇れるものであることを発見した、そんな伊藤博文の経験がここに出ています。彼我を冷静に比較できるところは、とても31歳のものとは思えません。

又我が女子を教育することに依り、我等は将来の時代に於て今より一層優秀なる智能の涵養を庶幾(しょき:切望する)するものなり。この目的を以て、我国の少女等は既に勉学の為め貴国に来りつつあり。

 この視察団の一つの特徴は、多くの男子に交じって、5人の女子留学生がいたことです。しかも、8歳、9歳、12歳、15歳、16歳と全員が若い。なかでも津田梅子(帰国後に女子英学塾、後の津田塾大学を創設)は数えで8歳、満でいえば6歳という幼さでした。その彼女たちも先進国の英知を学ぶことで、「今より一層優秀なる智能の涵養を庶幾する」、と大きな期待を背負っていたのです。

 この後、日本はいまだ創造的な能力に欠けるところはあるが、良い点は積極的に取り入れていくとし、さらに、自らが一年ほど前に滞在したニューヨークでの体験を語り、これまで諸外国から学んだ多くのことは既に実行に移されていると紹介して、今回も学んだことは国に持ち帰って導入したいと述べています。

 日本は、猶ほ未だ創造的能力を誇る能はずと雖(いえど)も、経験を師範とせる文明諸国の歴史に鑑み、他の長を採り誤を避け、以て実際的良智を獲得せんと欲す。一年足らず以前に予は合衆国の財政制度を精細に調査したることありしが、その時華盛頓(ワシントン)滞在中貴国大蔵省高官より貴重なる援助を受けたり。而して予の学び得たる各種の事項は、誠実に我政府に報告せしが、その献策は大抵採用せられ、既に実行に移されたるもの少なからず。現に予の管轄下にある工部省に於ても、進歩の大いに見るべきものあり。鉄道は帝国東西両方面に敷設せられ、電線は我領土の数百哩に亘(わた)って拡張せられ、数箇月中に殆ど一千哩に及ばんとす。燈台は今や我国の沿岸に設置せられ、我造船所も亦活動しつつあり。此等の施設は総て我文明を助成するものにして、我等は貴国及び他の諸外国に対し深く感銘する次第なり。

日本には、新しいものを生み出す力はないが、文明諸国から良いところを学び、学んだ結果は、即座に反映させていると、鉄道や電線の敷設、灯台の設置、造船所の建設など具体的な例を紹介し、こうしたことへの支援に感謝を述べています。

※挿絵脚注
左から、永井しげ (10)、上田てい (16)、吉益りょう (16)、津田うめ (9)、山川捨松 (12)。明治4年。数字はかぞえ歳。
(米:パブリックドメイン)

梶文彦 写真

梶文彦氏執筆による、コラム「ものづくり 日本の心」です。
梶氏は、長い期間にわたりものづくり企業の国内外でのコンサルティングに携わり、日本製造業を応援しています。
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